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真・その名はマコト!!!(前菜パート5)

使える・・・・使えるぞこの力。
あれからいろいろ試した。
 俺に覆いかぶされとか、俺に触れたまま溶けろとか、貴方と合体したいとか。
 どれも失敗だったが、だがわかった事があった。
 それは操影術の手、つまりサヤの手と自分の手が触れ合えないことだった。
 触れようとすれば磁石のN極とN極、S極とS極が反発してしまうように近づけるだけでも困難だった。
そして無理に繋ごうとすると体内にある魔力がざわざわと疼きはじめる。
 その現象がなにを意味しているのかは嫌でもわかった。
 簡単に言えば魔力の暴走による内部からの魔力爆発=俺、破裂。
 一度はこのやり方が間違っているからこんな拒絶反応が出てるのかとも思ったが、それ以外はなにも起こらなかった。
 ――――このまま試して、もし破裂したら世界一間抜けな魔法使いだな俺は。
 しかも親友一人救えず自ら死んだ単なるバカになるわけだ。
・・・・ならねぇ! ならねぇぞ! 俺はそんなバカにはならねぇ!
この石化を直してあいつらぶっ飛ばして、木乃香、刹那を救う!!
「もし、これで俺が死んだなら俺は神に一言言ってやる! 空気読めってな!」
「サヤ!! 一気にこいやぁああああああ!!!」
 サヤは頷くと一気にマコトの掌目掛けて手を伸ばす。
 だが、あと少しのところでサヤの手は止まってしまう。
そこからはいよいよ力の反発が始まる。
「押せ! 押し込めサヤ!!」
 見えない何かに阻まれながらも少しずつ距離を縮めるサヤ。
 二人の周りに風が吹き、雷がはしる。
 くっそ! 肩から腕にかけてが完全に石化してるから腕があがらねぇ!
 完全にサヤ任せなのが悔しい。
 行き場を失った魔力が強風と雷を引き起こす中、サヤという操影術の小さな手がマコトの石化し、ひび割れた大きな手に重なった・・・・。
 ――――サヤと手が重なった瞬間、知らない女性が俺の方を向いて笑っていた。
 それは本当に一瞬の光景で、気がついたら素っ裸で倒れてた。
 問題はそこからなんだよ。石化は全て解除されて、しかも内から溢れてくる力っていうのか? そういうのも確かに感じた。
 まさに良い事尽くしで意気揚々といざ木乃香達の下へと思い、立ち上がった俺に戦慄はしる。
「・・・・」
 そう。服がね・・・・下着と一緒に小石となってそこらに転がってるんだ。
 考えてみれば当然の事だよね。服には血が通ってる訳じゃないから石化が解けるわけがないよね。
 だけどさ、悩んでる暇ないわけじゃん。
 映画村で刹那と誰かが戦ってるのわかってる訳だしさ。
 だから・・・・そのまま走ったさ! 変態? 猥褻物陳列?
 ああ、何とでも言え! だが、俺の速さは素人にはまず見えないから大丈夫だな。うん。
 因みにいま着てる長着は映画村に着いた時、男子学生が着ていたのを奪ったものだ。
「すまんどこかの学生よ」
「ん? なんか言ったか? マコっちゃん」
「いや、なんでもない」
 フッだが流石に下着も履かないとなるとやはりスースーするな。
「よし俺は先に戻る。あとは任せたぞ刹那」
 早く帰ってトランクス履きたい。やはり落ち着かん。
「はい。」
「え? マコっちゃん家に帰るん?」
「おう、色々報告しないといけないからな。お前は刹那と一緒にこい」
 そして二人と別れ、先に自宅へと戻る。
 とりあえずトランクスを履いて、正装である狩衣を着込み、姿見で確認する。
「どわっ!?」
 一瞬、自分のようで自分じゃない姿が映し出され、マコトは驚く。
 悩みの種だったアフロは、銀色のサラサラヘアーに姿を変えていた。
「やばい、夢にまで見たビジュアル系だ・・・・」
 目も真っ赤になってる! こりゃいよいよ俺の時代がきたな。
「どうも、CDT○をご覧の皆さんこんばんは。MAKOTOです」
 浮かれるマコトだったが、徐々に姿見に映った姿が元に戻っていく。
「あーサヤ! もちょっと待ってくれ!」
 マコトの願いも虚しく、いつもの自分に戻る。
「はぁ~。融合には時間制限があるみたいだな・・・・」
 さて、詠春様に色々と報告しないとな。
 自宅から出ると爆発した実行部隊の御所跡地に式神がせっせと新たな木材を運んでいた。
少し辺りを見回すマコト。
“マコト様、僕はどうなっても良いんだ! でも千草姉ちゃんの事は見逃してほしいんだ! お願いします!”
「・・・・流石に嫌われたか」
「? マコト様? どうされました?」
 話しかけてきたのは本山で働く巫女のお姉さんだった。
「いや、子烏がいないなって・・・・」
 マコトは視線を逸らして、頬を掻いた。
「子烏なら修練場で見ましたよ」
「修練場?」
「はい。三人とも必死になって鍛錬してましたよ」
 マコトは空を仰ぎ、そっかと返した。
 難しいな、部下の想いを汲むっていうのも。
「それよりマコト様! 謁見の間に急いでください!」
「あ、やっべ!」
 それからマコトは巫女に先導され、謁見の間の専用入り口へとやってくる。
 巫女は入り口に来るなりその雰囲気を一変させる。
「・・・・マコト様わかっていると思いますが、貴方様は今や長、詠春様の剣と言っても過言ではないのですよ」
 どこかの姑みたいなこと言いつつマコトの狩衣を手直す。
「それ相応の威厳をもってください」
「・・・・わかっています」
 そう答え、彼女が差し出す刀を受け取る。
 代々受け継いできたこの刀を腰にするだけでこの実行部隊長という役職の重みが伝わってくる気がする。
刀自体は決して使うことはない、ただの飾り過ぎない刀。
 だが、この異彩。身に着けるだけで引き締まる気がする。
「・・・・」
 マコトは入り口から入り、上座の横に立つ。
「あ、マコっ・・・・」
 木乃香はマコトに声を掛けようしたが、マコトから放たれる雰囲気はいつもとは違った。それは刀のように鋭く研ぎ澄まされたものだった。
「もうしばらくお待ちを、もうすぐ長が参りますので・・・・」
「「「は、はいっ・・・・」」」
 ネギ、アスナ、木乃香は雰囲気の一変したマコトにそう言われ声を上擦らせてしまう。
「お待たせしました、ようこそ明日菜君このかのクラスメイトの皆さん。そして担任のネギ先生」
椙で出来た階段を鳴らし、表情に少し疲労を見せた詠春が降りてくる。
そこからは早かった。
ネギが詠春さんに親書を渡してから詠春さんの案でここにきたネギやクラスメイトをここに泊めることとなり、宴を開いた。
そしていま宴で意気投合したネギと一緒に風呂で今日の汗を流そうと考え浴槽までやってきた。
「いや~この度はウチのバカ共が迷惑をかけてしまい申し訳ない」
「い、いえ」
「俺にはよくわかんねぇけど、昔から東を快く思ってない奴らはいたんだが今回動いたのが少人数で良かったよ。なんとか俺一人で片付けられたしな」
「は、はい! あとコタロー君は・・・・」
 言葉の途中でネギは顔を俯かせてしまう。
「ネギ先生と戦った狗族の少年か、悪いけど相応の罰は受けることになると思う。まぁ、でもそんな酷いことにならねぇって」
 マコトはその言と共にネギの頭を少し乱暴に撫でた。
「・・・・はい。それであのお猿のお姉さんの目的は何だったんですか?」
「あの猿女、天ヶ崎千草か。まぁ小さい時から知ってるんだが・・・・色々と西洋魔術師に恨みがあるみたいだな」
「何故このかさんを狙うんですか?」
 マコトはタオルを折り、頭に乗せると溜息を一つついて言を口にした。
「切り札だな」
「切り札ですか?」
「ああ、ネギも薄々気づいてるとは思うが・・・・」
 やんごとなき血脈を代々受け継ぐ木乃香には凄まじい呪力、つまり魔力を操る力が眠ってるんだ。
 その力はお前の親父、伝説のサウザンドマスターをも凌ぐ程らしい。
 簡単に言えば木乃香はとてつもない力を持った魔法使いなんだよ。
 だからその力を上手く利用すれば此処の本山はもちろん関東魔法協会も簡単に潰せると考えたんだろ。
「だから詠春さんは木乃香を守るために安全な麻帆良学園に住まわせて木乃香にはそれを秘密にしてたんだと」
「そ、そうだったんですか・・・・」
 ネギはそう聞くと顔を俯いてしまう。
「なんだ責任感じてんのか? ハハハ! 気にすんなよ。どっちにしろ秘密にしようにも限界があるからな。早いか遅いかの問題だ、だからネギが気にする必要ないぞ」
「はい! ところでサウザンドマスターのコト知っているんですか?」
「ああ、俺は勿論知らないよ。だけど詠春さんは実際サウザンドマスターと一緒に旅をした人だから後で取り次いでやるよ」
「え!? いいんですか!? ありがとうございます!」
「ところで先生、俺の携帯を拾ってくれたあの前髪の長い女子は誰ですか?」
「え!? み、みみみ、宮崎さんがどうかしましたか!?」
 顔を真っ赤にして慌てふためくネギ。
「へぇ~宮崎さんって言うのか~。今時めずらしいほどウブな娘だよな」
 マコトは露で一杯の檜で出来た天井を見てしみじみ呟いた。
「俺に携帯返す時も・・・・」
 あの、えっと、その、あのあのあのあの・・・・。
「って、顔真っ赤にして声上擦らせてさ。可愛かったな」
「き、気になりますか? 宮崎さんの事・・・・」
 ネギの突然の問いにマコトは短く鼻で笑う。
「引っ込み思案で話し下手でおまけに真性のウブ。そんな女性に惹かれない男子はいないだろ」
「でも、あの娘は既に好きな人がいるみたいだな・・・・」
「・・・・え?」
 風呂場でネギの少し呆けたような声が響く。
「フフン、伊達に女性を観察をしてないぜ。真剣に恋してる女子とそうじゃない奴の区別くらいはわかるぜ? そして引っ込み思案の娘はそういう時強くなる。いきなり告白とか大胆な行動に出るケースが多いな。そしてなにより一途だ。くぅ~あの娘を惚れさせた男が羨ましいぜ~」
 マコトは横を見るとネギが顔を嘗て無い程真っ赤に染めて口を金魚のようにだらしなくパクパクさせていた。
「おいおい! ネギ大丈夫か!? 思えば長風呂だな、もうあがれ」
「・・・・はい。すいません」
 そう気の抜けた返事をするとネギはフラフラと浴場を去っていった。
 マコトだけとなった浴場には隣の浴場からの黄色い声が僅かに響いていた。
「さて、俺のあがるかな・・・・」
 マコトは浴槽からあがり、脱衣所へと通じる戸へ手を伸ばすと思い立ったように言う。
「あ、そうだった。御嬢様方、いつまでもそんなはしたない格好でいたら湯冷めしますよ?」
 マコトがそう言うと岩陰でビクついた二人分の影あった。
 脱衣所入った時点でわかるっての。
 てか、なんであいつら男湯に入ってるんだ?
・・・・。
・・・。
 ・・。
「はぁ・・・・」
「露骨な溜息はやめてくださいマコト様。幸せが逃げちゃいますよ?」
 とある一室でマコトは書類を睨んで溜息を漏らしていた。その傍らには目付け役の巫女が一人。
「いや、普通こういう事務的な作業って俺よりか下の人がやるもんじゃないの?」
「その配下の皆さんは何処におられるのです?」
「・・・・あ。」
 そうだよ。皆出払ってたな・・・・唯一残ってる子烏たちは小学生だしな。
 でも、まてよ俺の目の前にいる巫女がいるじゃないか。俺の権限で命令すればきっと・・・・。
「先に断っておきますが、私は飽くまで詠春様の配下ですから・・・・」
 巫女はそれだけ言うと微笑んでみせる。
「へいへい、そーですか。」
 チッ。
「いま舌打ちしました?」
「えっ!? そ、そそそそんなわけないじゃないですか」
 心が読めるのか!?
 その時、机の上に置かれた携帯がけたたましく鳴る。
 見ると身に覚えの無い番号からの着信だった。
 む? こないだ引っ掛かったワンクリのサイトからの電話か?
 ちくしょう、“《素人盗撮》都内爆乳教師の生着替え”とあったからついついしずな先生のことかと思ってクリックしちゃったぜ。
 そしたらご契約ありがとうございます。つきましては契約料として8万振り込めだと? ふざけるな! お前らがしずな先生の生着替えを撮ってきてくれるならいくらでも出そう! だが、それが出来ないのなら金を払う義理はないぜ!
 さて、ゆっくり詳しい話を聞こうじゃないか。
「もしもし・・・・」
 ん? なんの反応も帰ってこないぞ? わずかだが、風の音が聞こえる。外なのか?
「・・・・マコト様!」
「ん? 誰だ?」
 突然聞こえた声は女性のもので酷く嗄れていた。
「マコト様逃げて! 木乃香お姉ちゃんと長さんを連れて逃げて!!」
「その声、凛華か!? どうした!? 一体なにを言ってる!?」
 電話の向こうからは凛華の荒い息使いが聞こえる。
「・・・・ごめんなさいマコト様、三人で力を合わせて戦ったんだけどダメだったよ・・・・木乃香お姉ちゃんを連れて逃げて・・・・」
 それから風の音しか聞こえなくなった。
「凛華っ!? おい!」
 子烏に一体何が起きた!? 敵!? 猿女たちなら俺が倒した筈だぞ!
 しかも此処は本山、結界をそう簡単に抜けられるわけがない。
「マコト様!!」
 突然、巫女はマコトの腕を強引に引き寄せ、そのまま覆いかぶさる。
「っ!?」
 マコトの目の前で巫女は顔を歪ませる。
「残念、不意打ちは失敗か・・・・」
 そう言う声が響き、畳に零れたお茶からあの白髪の少年が姿を現す。
「お前、どうして!?」
「徳川 マコト。君、あの時何を使ったの? どうやって僕の石化を解除したの?」
「守護壁!」
 白髪の少年の問いを遮るように巫女の声が響く。そして二人を囲むように正方形の障壁が展開される。
「まったく此処の巫女はたちはみんな優秀だね。でも目的は君じゃないからまぁいいや」
 白髪の少年は溜息を一つつくとそう言い残し、再び姿を消した。
「・・・・さぁ、ここまでが私の役割です。ここからはマコト様が実行部隊長としての役割を果たす番ですよ?」
 彼女はそう言い、少しだけ微笑んで物言わぬ石像に変わった。
「・・・・」
 マコトはゆっくりと立ち上がると自分を庇って石化した巫女を見つめる。
「なにが・・・・なにが実行部隊長だよ・・・・」
 こうなったのは・・・・全部・・・・。
「俺の所為じゃねーかよ!!」
 あの時、倒したと思って一人で舞い上がって・・・・。
詠春様には首謀者の猿女を倒したと馬鹿みたいに堂々と報告して・・・。
・・・・死体も確認せずになにが猿女は倒しましただ。
子烏に偉そうな事を言っておきながら自分が誤った報告をして・・・・。
「なにが実行部隊長だ! 所詮、俺はただの中坊なんだよ!!」
 マコトは拳を強く握る。その拳からは血が静かに滴っていた。
“ここからはマコト様が実行部隊長としての役割を果たす番ですよ”
「・・・・わかってるよ」
 マコトは携帯を手に取ると火砕に繋いだ。
「火砕、緊急事態だ。俺は事態の収拾にかかる。お前達は早朝までに帰還し、猿女天ヶ崎千草を抹殺・・・・いや、捕らえろ! 必ず生きて捕らえろ!」
「承知」
 マコトはゆっくり部屋を出る。
 既に屋敷にはほとんどの魔力反応が無くなっていた。
「・・・・詠春様」
 長もやられ、木乃香の反応も既に無く、ネギと刹那とアスナさん達はもう動いてる。
 完全に出遅れているのに妙に落ち着いている。
「いくぞサヤ・・・・今度こそケリをつける」
 青年とその傍らに姿を現す少女は夜桜が舞うなか、風のように姿を消した。
 その頃、アスナと刹那はネギの帰りを待ちつつ、木乃香の力で呼びだされた無数の鬼や魍魎と戦っていた。
「はぁはぁ・・・・それにしても本当にマコトさんを探さなくてよかったの?」
「あの場合、仕方ありません。探しに行ってマコト様がやられていたら重大なタイムロスになります」
 そう当然のように言い放つ刹那にアスナは驚きを隠せなかった。
「・・・・心配じゃないの?」
 そう訊くアスナに刹那はなにも答えず、無表情のまま魍魎を薙ぎ払った。
「あ」
 アスナは即座に悟った、今のは失言だったと。刹那の性格だ幼馴染であるマコトさんの事を心配しないわけがない。
 アスナは刹那のもとに走る。
「刹那さん、ごめん」
「・・・・マコト様との約束なのです」
「・・・・え」
 突然の刹那の言に呆けた声を出してしまうアスナ。
「例え、私とマコト様どちらかに何があってもお嬢様に危機が迫った時は生き残った方が必ずお嬢様を助けると」
 そう言った刹那の横顔は凛として、刹那の確かな覚悟を感じさせた。
「・・・・すごいね。私はこのかが凄い力を持った魔法使いだって聞いただけで動揺しまくりなのに刹那さんは・・・・一つも揺るがないでこのかを助ける為に覚悟を決めて、今をこうして戦っている」
 その時、一匹の鬼が気配を消し、アスナに奇襲を試みる。
「っ!? 明日菜さん! 後ろ!!」
 だが、奇襲を試みた鬼はアスナの振り向きざまの一閃で霧と消える。
「・・・・うん、私も決めたよ覚悟! 絶対にこのかを救ってみせるよ」
 そう告げるアスナの顔はどこからか勇気が沸いてくるような笑顔だった。
 刹那とは違い凛とした雰囲気はないが、この絶望的な状況下でも決して希望の光は見失う事はない。そんな力強い笑顔だった。
「ふふっ・・・・」
 思わず、刹那の顔に笑顔がこぼれる。
 二人は互いに見つめあい、何かを確認するように一度頷くと今度は同時に背を向け、
「さ~て、ネギが戻ってくるまでにもう一頑張りしますかー!」
「はいっ! いきましょう!」
 だが、アスナは失念していた。自分の今の姿を・・・・。
 それこそ昼間のマコト状態だという事を。
「それにしても、最近はすかあとの下に肌着を着けへんのが流行なんかいな?」
「いやーいつのまにか21世紀ですからねー何があっても・・・・」
 鬼たちの会話にアスナは顔を真っ赤に染めスカートを慌てて押さえるも時既に遅し。
「お、動きが遅なったで、ひっ捕らえい」
 すると大量の鬼がアスナに襲い掛かる。
「いやーん。なんで私いつもこんな役ー!?」
 アスナは恥ずかしさのあまり、スカートを押さえて逃げ出した。
「明日菜さんしっかりしてくださーい」
 その時、空から一条の光がアスナの後方に突き刺さり、轟音と共に鬼達を吹き飛ばした。
「今度はなによー!?」
 衝撃波と強風が止むと夜の暗がりから人影がこちらに向かって歩いてくる。
 そして、月光が照らすとそこにはマコトが立っていた。
「パンパカパーン♪ 主役登場! ぶい!」
「ぶい! じゃないわよっ!?」
 アスナはおもいっきり手に持っているハマノツルギ(不完全)でマコトの頭を叩く。
「痛っ!? ちょ、アスナさんそれ洒落にならない」
「・・・・マコト様、ご無事でなによりです」
「・・・・ああ、悪いな遅くなった。と、謝ってる暇もないから」
 そう言うとマコトは刹那、アスナの襟元をおもむろに掴むと力任せに空高くほうり投げた。
「ちょ、ちょっとおおおおおお!?」
「マコト様!?」
 空高く舞い上がる二人を掴み、華麗に木の上に降り立つもう一つの影。
「あの白髪のガキはネギ一人じゃどうしょうもない敵だ、だからお前らも行け。ここは俺が片付けとく」
「ちょっと!」
「安心しろ、俺も後で行くから。それまで時間稼ぎよろしく」
 そう言い、マコトは親指を立てる。
「行けサヤ!」
「マコト様!?」
 暗闇の森の奥からアスナの文句のようなもの響いていた。
「誰やおもたらまたおぼこい坊ちゃんかい、ほれイイコイイコしたるから今日はお家に帰り」
 そう言い、マコトの頭を無造作に撫でる細身の鬼。
「おい、気安く・・・・」
 マコトは鬼の手を払うと逆に鬼の頭を掴み、そのまま握り潰した。
「触わるな・・・・」
「腕力だけで握り潰しやがった・・・・」
「俺は関西呪術協会実行部隊長、徳川マコト。三下妖怪に興味はねぇんだよ」
「・・・・そんなつれない事言うなや。コッチは徳川と聞いて滾ってきたんだからよ」
 マコトを取り囲む妖怪の目が紅く光る。
「いいね。ゾクゾクしてきた」

 その頃ネギは途中で現れたコタローの妨害を受け。足止めを食っていた。
 ネギは必死にコタローに説得を試みるも逆に挑発に乗ってしまう。
 だが、そこに忍者である長瀬 楓が現れネギに道を示す。
 ネギは我に返り、再び走り出した。
 そしてそこに二人の少女が乱暴に降ろされる。
「痛っ!?」
「いつつつ・・・・ちょっと! もう少し優しく降ろせないの!?」
 お尻から落とされ擦りながら声を上げるアスナに対してサヤは一切反応せず、再び風の様に去っていった。
「もう! なんなのよ!」
「とりあえず急ぎましょう」
 そう言う刹那の眼光は鋭く天に届く光の柱に向けられていた。
 二人は走り出した。

「潰れろ」
「ひぃいいい。おやぶーん!」
 既に妖怪の数は半分以下となっていた。
「あやー? 刹那センパイはおらへんのー?」
 神鳴流か・・・・。
「いねーよ。それでも遊びたいって言うなら来いよ」
「いややわ~そんな獣みたいな目で見つめんといて~」
「よく言うぜ、お前も同じ目をしてるじゃねーか」
 マコトは遠くで光の柱が先程よりも大きくなっている光景を横目に強く拳を握り、再び目の前の敵に向かって走り出す。
 あそこには大昔に暴れた恐ろしい鬼が封印されているらしい。茨城童子とかの類かなんか知らんが、あれだけの魔力が出てるという事はそれ相応の鬼なんだろうな。
 そして、その封印解除は止められん。あの白髪の餓鬼がいる限りな。
 だが、俺の中では既にこの事態にケリがついている。
 神鳴流、狗族の餓鬼、百を超える魑魅魍魎、謎の多い白髪の餓鬼、そして・・・・。
 マコトは顔を上げると巨大な鬼が遠くでうなり声を上げ、この世に再び姿を現した。
「ほっほ~こいつは見ものやな~」
「巨躯の鬼か」
 これで、あの猿女のカードはすべて切られた。
「どうした徳川の血を受け継ぐ者よ、手詰まりか?」
「ハッ、まさか。ここから反撃が始まるんだよ」
 瞬間、一匹の魍魎の頭が撃ち抜かれる。
「ぬおお!? しまった!? 新手かあああ!?」
「これは!? 術を施された弾丸!? 何奴!」
 数匹の魍魎を撃ち抜き、姿を現す少女。
「要望どうり最高のタイミングで現れたつもりだが、満足して頂けたかな?」
 そう言い、手持ちのライフルに弾を込めるロングの黒髪で褐色の肌をした少女。龍宮真名だった。
「・・・・俺と結婚してくれ」
 ここに来る前にウチが信頼している傭兵、仕事人リストを見て女性の名前があったので携帯で応援を要請したのだ。声からして美人だとは思っていたが、これほどとは!? 思わず結婚を申し込んでしまった・・・・。
「いいぞ」
「だよな、普通断るよな・・・・って!? ええええええ!?」
 え!? ちょ!? いいんですか!?
「このリストから選べ・・・・」
 ヒラヒラとマコトの目の前に一枚の紙切れが落ちてくる。
「ん?」
            結婚相手役詳細

両親、親戚、友人への挨拶周り。$20000000
尚、友人等にせがまれてキスする場合$1000000上乗せとなります。
結婚式$15000000
尚、誓いのキスは$1000000上乗せとなります。
今なら$1000お得なコースもあります。
「どうだ?」
「高っ!? しかも$かよ! なに$1000お得って! 全然得してないじゃん!」
「安心しろ。契約すれば一日完璧な良妻を演じてやるぞ」
 そう言う彼女は自慢げに鼻を鳴らした。
「契約じゃなくてマジで付き合って欲しいな」
「私とか? フッ、やめておけ・・・・」
 一瞬、悲しい目をした少女をマコトは見逃さなかった。
 不思議な色をもった瞳だった・・・・。綺麗なのだが、どこか儚い、そんな瞳だった。
 これ以上は恥ずかしい台詞を言えなかった。
 なんとなくこの女性には口説き文句は言ってはならないような気がした。
「さーて、迎えも来たみたいだし。此処は任せるわ真名ちゃん」
 軽い屈伸運動をし、そう言うマコトの傍らにはサヤが降り立つ。
「ああ、報酬分は働くよ」
 先程から会話をしながらも彼女は手は止まらない。常に引き金を引き続ける。
「サヤ、一気に片付けるぞ」
 サヤは一度頷くとマコトの差し出した手を握る。
 瞬間、辺りが眩い光に包まれる。そして現れるは銀髪紅眼の青年。
「・・・・ほう」
 その姿を見て、龍宮は思わず感興の声を洩らす。
 そして青年はそこから姿を消した。
 その頃、アスナ、刹那は無事ネギと合流
を果たし白髪の少年と戦っていた。
「このぉ!」
 アスナは少年に斬りかかるも容易く捌かれる。
「君のそのアーティファクトは危険だけど、触れなければどうということはない」
「ぐっ・・・・」
 そこからネギ、刹那と見事にねじ伏せられ、まさに劣勢状態であった。
「三人一緒に石像に変えてあげる。ヴィシュ・タルリ・シュタルヴァンゲイト小さき王(バーシリスケ・ガレオーテ)八つ足の蜥蜴(メタ・コークトー・ポドーン・カイ)邪眼の主よ(カコイン・オンマトイン)時を奪う(プノエーン・トゥー・イゥー)毒の吐息を(トン・クロノン・パライルーサン)石の吐息(プノエー・ペトラス)」
 瞬間、少年から放たれるは一種の呪いである石化する煙。その煙に触れた者、吸った者全てを石にしてしまう。
 だが、煙が風によって流された後には誰も居なかった。
「ふぃ~、なんとか間に合ったみたいだな。大丈夫か三人とも」
「マコトさん!」
「マコト様!」

「ええっ!? この人マコトさん!?」
 そうアスナだけはマコトがサヤと融合した姿を見てなかったのだ。
「ネギ、その手・・・・」
 マコトがそう言うとネギは片方の手をさっと隠す。
「だ、大丈夫かすっただけです」
 あまり時間がないな、幸いネギは魔法抵抗能力が高いみたいだ。
「マコト様、お二人を連れて逃げてください。お嬢様は私が救い出します!」
「えっ!」
「お嬢様は千草と共にあの巨人の肩の所います。私ならあそこまで行けますから」
 そうか、使うのかアレを・・・・。
「で、でもあんな高い所にどうやって」
「マコト様、ネギ先生、明日菜さん、私・・・・マコト様や二人にもこのかお嬢様にも秘密にしておいたコトがあります・・・・この姿を見られたらもう・・・・お別れしなくてはなりません。でも・・・・今なら」
 少女の背中に純白の翼が現れる。穢れのないその翼は僅かに光を放つ。
「これが私の正体、奴らと同じ化け物です。今まで秘密にしていたのは・・・・この醜い姿をお嬢様やマコト様に知られて嫌われるのが怖かっただけ!」
 少女の叫びにも似た嘆きは少し冷えた夜風にのって駆け抜けていく。
「私っ・・・・」
「どりゃー!」
 瞬間、マコトの平手打ちが刹那の頬に炸裂する。
「え? え・・・・」
「長いわ! ボケっ! お前が鳥族だって事は当の昔に知ってんだよ!」
 忘れるわけねーだろ――――。
 当時、俺の周りには大人ばっかだった。同い年の子なんて一人も居なかった。
 そんな時、神鳴流の偉い人に連れられてやってきたのが刹那だった。
 正直、本山内で初めて見る歳の近い女の子だった。
 今思えばあの時ほどドキドキしたことはなかったな・・・・。なにせ、初めて友達が出来るかも知れないという期待もあったし、女の子とどう接したら良いのかわからなかった時だったからな。
 だが、興味は尽きなかったんだよな。神鳴流の偉い人と謁見の間に入っていく刹那を追って、覗いたんだよな。
 俺の視線は刹那に釘付けだった、親父たちが何を話しているかなんてどうでもよかった。だが次の瞬間、神鳴流の人に促され着ている胴衣を脱ぎだす刹那、真っ白な肌が露わになった直後、その小さな背中に純白の翼が現れる。
 そりゃ驚いたさ。でも、恐怖感はなかった寧ろ綺麗だと感動したもんだ。
・・・・だけど刹那はその小さな手で一生懸命に自分を抱きしめていたんだよな。その目に涙を溜めて。
 その時思ったんだよな~。コイツを笑顔にしてみたいって・・・・。
 コイツの笑顔を見てみたいって。
 その後、涙の跡の残る刹那に声を掛けたのは言うまでもない。
「お前がウチに来たときから知ってんだよ! 俺や木乃香に知られて嫌われる? そんな訳ねーだろ! 俺達が過ごしてきた短くも楽しかったあの時間がお前が鳥族でしかも翼が生えただけで壊されて堪るか!」
「・・・・はじめから知っていて声を掛けてくださったんですか?」
 涙声でそう訊ねる刹那にマコトはすっと刹那に顔を近づけると軽い頭突きをおみまいする。
「お前を化け物と思った事なんて一度もねーよ。木乃香だってそんな事でお前を嫌いになるわけねーだろ。いつまでも一人相撲やってんじゃねーぞ刹那」
 刹那は涙を拭い、小さくそうですねと口にした。
「あーあ。私の言いたいこと全部言われちゃった。行って刹那さん! 私達で援護するから。ね? マコトさん?」
「当然、あのガキとの決着をここでつける!」
「ホラ、早く刹那さん!」
 刹那の目に映る三人の自信に満ちた笑顔は刹那に勇気を与えた。
「ハイ!」
 飛び立つ刹那、そして現れる白髪の少年。
「ネギ先生、アスナさん。ちょっと耳貸してくれ」
 ごにょごにょ。
「えー! そんなにうまくいくの?」
「任せとけ」
 そう言い、マコトは白髪の少年と対峙する。
「本当にうまく行くのかな?」
「はぁ、はぁ、・・・・ここはマコトさんを信じましょう」
 “聞こえるか坊や。フフフ、僅かだが貴様らの戦い見せてもらったぞ”
“それはそうとマコトに伝言を頼もうか”
“私がそっち行くまでの1分半、せいぜい舞台を暖めておけとな”
「マコトさーん! エヴァちゃんからの伝言で、なんか1分半までに舞台を暖めとけって~!」
「それにしてもマコトの兄貴は凄げぇな。あの戦い方はある意味最強だぜ?」
 カモの言葉にアスナは疑問符をうかべる。
「あれだけ接近されたらまず魔法は詠唱出来ねぇし、習得した武術でマコトの兄貴の攻撃を捌くことは出来ても、逆に手を出せば同時に攻撃を受けちまう」
 その時、マコト声が夜空に響く。
「アスナさん! そろそろいきますよ!」
「りょ、了解! ネギお願い!」
「契約執行(シス・メア・パルス)!!」
 アスナは野球のバッターの様にハリセンを構える。
「ピッチャー第一球・・・・」
 白髪の少年とマコトの攻防の中、尚マコトの声が響く。
「蹴りました!!」
 マコトの撃蹴を障壁で軽減するも白髪の少年の身体は宙に舞う。
「ナーイス。イタズラの過ぎるガキにはおしおきよっ!」
 アスナは自分のところに飛んできた少年を容赦なくハリセンで振りぬく。
 結果、白髪の少年の障壁は消え去る。
 そしてその瞬間、マコトが少年の顔を掴み、軽々しく持ち上げる。
「ぐっ。くっ・・・・」
「今度は避けられねーぞ餓鬼。プラグテ・ビギナルサギタ・マギカ(魔法の射手)ウナ・ルークス(光の一矢)」
 そしてマコト手から巨大な光の矢が湖を裂いて飛んでいく。
「あー。つかれた~。」
 マコトはそう言い、サヤとの融合を解き、橋の上で仰向けに倒れる。
「フッ、どうやら舞台は暖まったようだな・・・・」
 その言葉と共に、マコトの影が形を変えて現れたエヴァンジェリンだった。
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コメント

[C50] 誤字発見

初めまして、後悔すべき毎日さんから飛んできたものです。楽しく拝見させていただきました。
気になった誤字一件報告させていただきますね。
刹那は狗族ではなく、烏族だったとおもいますよー。
  • 2009-07-17 10:18
  • アスム
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