お尻を出した子一等賞。
只今、ネギま書き直し中~♪ ネタバレにご注意を。
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真・その名はマコト(前菜ぱーと7)
「ハァハァ・・・・ハァ」
「どうした? それとも関西魔術協会実行部隊長の力とはこの程度か?」
青年は片膝をついて一人の少女を一瞥する。
「どうした? それとも関西魔術協会実行部隊長の力とはこの程度か?」
青年は片膝をついて一人の少女を一瞥する。
・・・・もう夕方か。だが、これで外に出れば昼間っていうんだから驚きだ。
本山から戻ってきてから俺はすぐにマスターの家へとやってきた。
そこには大きなフラスコがあってその中には白い塔が建っていてまるで別の世界だーなどと感動しているといつの間にか別の場所に立っていた。
そこにはマスターと茶々丸さんと目つきの悪い人形がいて、マスターの話じゃあ此処は一応別荘なんだと。
しかも此処での一日は現実世界の1時間なんだとよ。
“我がペットに送るプレゼントだ”
などとちょっと気になる単語があったが、プレゼントだと言われたらやっぱり嬉しいもんだな。
それから私たち三人と戦えと言われ、今に至るわけだが・・・・。
「きっつ・・・・・」
息を整えつつ、青年はそう呟いた。
俺はいつも通り身体に魔力を流し身体強化をして一気にマスターまで迫る。
が、そんな事を許してくれる従者の茶々丸さんではない。
彼女が曲者だった。茶々丸さんの攻撃に合わせ、こちらも拳を放つ。
普段なら俺の拳は茶々丸さんに届き、俺も茶々丸さんの拳をもらう筈だったのだが・・・・現実には俺だけが茶々丸さんの拳をもらっていた。
ありえなかった。茶々丸さんは攻撃を繰り出すのと同時に防御も行えることを知った。
故に・・・・攻撃してくる→こちらも同時に攻撃→俺当たる→茶々丸ガード。
更に俺の攻撃をガードした後、茶々丸さんの立ち上がりが異状に早いときてる。
よって、俺ボコボコ。
この人本当に人間!?
「ケケケ。モラッタゼ!」
青年の死角から凶風がやってくる。
「お前は壊れる前にさがってろ!!」
青年の拳は風を切り人形の身体を捉える。
人形は30メートルほど吹き飛ぶが見事着地し、口元を吊り上げる。
「っ!」
なんだ? 肩が・・・・。
青年は肩に手をやると僅かだが口が開いて鮮血がだらしなく垂れていた。
冗談だろ!? どれだけ身体に魔力を流してると思ってるんだ!
“身体強化”凡そ魔法を扱うものなら必ず行っている魔法の基礎中の基礎。
基礎故に他の魔法使いならば“身体強化”を磨こうとは思わない。そんな事に時間を掛けるならもっと障壁や、防御魔法を覚えた方が確実だからである。
だが、マコトは違う。何故かはわからないがある程度の魔法しか使えなかった。だから両親に言われ、ただひたすらに身体に魔力を流し続けてきた。
結果として、マコトの“身体強化”は他に類を見ない程磨き上げられた代物となった。一度魔力を通せばその硬度はダイヤモンドの硬度を軽く越える。
魔法抵抗力も大幅にアップする。当然マコトにとって自身の身体強化には自信を持っている。さらにあの最強種を相手にしているのだ魔力の温存など無意味、全力で全身に魔力を流し続けている。
だが、自慢の身体強化がエヴァンジェリン本人ではなくその従者である気味の悪い人形に破られたのはショックを隠せないでいた。
「ケケケ、ソンナニ驚クコトハナイゼ? 今ノハ刃ニ御主人ノ魔力ヲ付与シタダケダゼ」
「マスターの魔力を付与・・・・」
つまりはあの刃に付与されたマスターの魔力の方が多かったということ。
これは更にキツくなった・・・・。茶々丸を抜けない上にいままで脅威ではなかった茶々ゼロの凶器が文字通り凶器になった・・・・。
「もういいだろうマコト・・・・」
砂金のような髪を風に揺らし、少女はつまらなそうに言う。
「ペットならペットらしく主人を癒し、愉しませろ。さもなければ早々に棄てるぞ?」
真紅の瞳がマコトを真っ直ぐ射抜く。
「愉しませる・・・・それはこういうことですか!!」
瞬間、青年の髪色が白銀に変化する。そして茶々丸と茶々ゼロの前から風の様に消える。
「わかってるじゃないかマコト!」
青年と少女はぶつかり合う。夕陽に照らされた二人の表情は不敵な笑みに染まっていた。
「え? ネギ先生がマスターに弟子入りを!?」
「うん、だからマコっちゃん。ちょっとネギ君見てあげてくれへん?」
放課後。日課であるマスターの別荘での鍛錬を終え、寮に帰る途中、木乃香に呼びつけられてやってきたわけだが・・・・。
「いや、見るって、なにを・・・・」
マコトの秘かな抗議は華麗にスルーされ、木乃香はマコトの手を掴んでズンズン進んでいく。
そして着いた先が世界樹近くの原っぱだった。
「こ、これは!?」
俺はついにあのアヴァロンに辿りついたのかもしれない。
目の前に広がるは3-Aという名の花畑、否、花園だった。
やはり、3-Aは女子の質が良い! これからはもっと3-Aとの合コンを積極的に企画していこう。
「マコっちゃん? なに泣きながら頷とるん?」
「え? いや、なんでもない」
マコトは一度咳払いをすると女性陣を意識しつつ、いつも通りを装う。
「んで? 俺に先生のなにを見ろって?」
なにやらこの二日前にネギ先生がマスターを訪ねて、弟子にして欲しいと言ったそうだ。
結果、テスト次第と判断されたらしい。内容は茶々丸さんに一撃入れろという物。
一見すると条件としては破格に見えるが、俺から言わせれば難題だ。
そして、相手の茶々丸さんと唯一戦ったことがある奴として俺が召喚されたらしい。
今のネギの動きを見て茶々丸さんに勝てるかどうかを見て欲しいそうだ。
そしていまネギ先生が俺の前でカンフーの型? なのか? とりあえず舞踊ような事をやってるんだが・・・・。
正直、カンフーの事はよくわからん。だが、その型はとても二日前に始めたようには見えない。
天才ってか・・・・。
「・・・・」
マコトは型を披露するネギにいきなり拳を放つ。
「っ!?」
だが、ネギはそれに気づくと瞬時にマコトの拳を捌く。
そしてお返しとばかりに拳を返した。
その拳はマコトの鳩尾を捉えていたが、寸前で止まる。
「きゃー♪」
一瞬張り詰めた空気を吹き飛ばす黄色い奇声。
「今の見た? 本当のアクション映画みたかったよネギくーん♪」
「これなら楽勝だね! さっすが天才少年!!」
興奮する女生徒達はネギを囲み、いろんな賛辞の言葉を口にする。
それを遠い目で見つめる青年が一人。夕陽の赤い陽射しが青年の涙の跡を照らした。
「嗚呼・・・・夕陽が沁みるな~」
いつしか、青年は一人世界樹の麓で膝を抱えて夕陽を見ていた。
「マ、マコト様?」
寂しい背中の青年に声を掛けたのは親友である刹那だった。
「刹那・・・・みんなは?」
「はい。シャワーを浴びにいかれましたが?」
「そっか・・・・それって酷くねぇ~か? 呼び出しといて人の話も聞かないでさ、しかも木乃香までいっちゃうとかさ・・・・もういいよ。どうせ俺なんて・・・・・」
「ところで、どうでしたかネギ先生は?」
膝を抱えて独り言を呪文のように口にする青年に刹那の少し張り詰めた声がかかる。
「無理だな。ってかお前自身もわかってるだろ?」
刹那の質問に即答する青年に同意を求められ、刹那は視線を逸らす。
「ネギ先生のカンフーは確かに凄いよ。とても二日前に始めたものとは思えない程の完成度だ」
だが、よく考えてみろ相手は茶々丸さん、俺から言わせれば近接戦闘術の達人だ。そんな相手に二日前に始めた付け焼刃の格闘術が通じる訳ねーだろ。
「まだ近接戦闘ド素人だった方が勝算はあったと思うけどな」
「それはどういう?」
「戦闘になったら相手を観察するだろ?」
「はい、もちろんです。相手の体格、姿格好、手にしている得物の種類、構えから相手の間合いを予想します」
「そう、それが普通。刀を構えて殺気を放ってくるならそいつは間違いなく剣道の有段者、同時に間合いも予想しやすいだろ?」
得物も持たず構えたならそいつは近接戦闘術に心得がある奴と予想できる。
その時点で相手がやってくる事は大方わかってしまう。
「刹那、もしもお前の前に立ちはだかった敵がなんの得物も持たず、なんの構えもせず、ただそこに立って殺気を放って、不敵に笑ってたらお前どうする?」
「・・・・うーん」
刹那は難しそうな顔をして答えを濁した。
「それだよ。なまじ多くの戦闘を経験してる者にこそ素人相手は戦い辛い。戦闘経験が豊富だからこそいろんな考えが頭の中を駆け巡る。得物は隠し持ってないかとか、構えがない格闘技なのかとか、見えない武器をもっているじゃないかとか、予想どころかありもしない妄想が出てくるものだ」
「確かに・・・・」
わかるところがあるのか刹那は恥ずかしげに頬を掻いた。
「だから、容易に攻められなくなる。達人だからこそ防御に徹するだろうな」
そして素人だからこそ戦い方はいくらでもある。だが、今のネギ先生はカンフー一辺倒・・・・だからこそ、間合いも攻撃パターンも予想しやすい。
「もし茶々丸さんが過去にカンフー有段者と戦っているなら尚、最悪だな」
「でも、ネギ先生ならやり遂げてしまうような気がします!」
か、確証はありませんけど・・・・と続ける刹那。
「そうだな。マスターに本気で教えを請いたいと思うならやるだろうな・・・・」
青年は空を仰ぐ、夕陽も沈み始めて赤と黒のコントラストの空が広がっていた。
「よし、刹那。俺達もシャワー行こうぜ!」
「えっ!? ええええええ! な、なななななに言ってるんですか!?」
「いいじゃん。昔はよく一緒に入ったじゃん」
「な、ななな何年前だと思ってるんですか!?」
「約一週間前に本山の大浴場で誰かさんが隠れてネギ先生と俺の入浴シーンを覗いてた奴が居たんだよなー」
「そ、それは@:^¥@:@・;@;・@!!」
・・・・・・。
・・・・。
・・・。
「そろそろ時間だな・・・・」
「オイペット、誰ガ下ロセナンテ言ッタ。チャント頭ニ乗セテロ」
時刻は午前0時世界樹の広場。
「ったく、外じゃ役立たずのくせに文句ばっか言いやがって」
「ケケケ、ソレヲ言ウナラ御主人ニ言エ」
マコトは渋々茶々ゼロをそっと頭に乗せた。
「アホか言えるわけねーだろ・・・・」
小さく呟いて横目でマスターを見る。マスターは茶々丸と何か話していた。
たかだか2日のカンフーで茶々丸さんに一撃か・・・・そんな事はまず不可能だ。
マスターもわかってる筈なんだけどな、ネギ先生のなにが見たいのかさっぱりわからん。まさかただの遊びなのか・・・・。
「エヴァンジェリンさーん、ネギ・スプリングフィールド弟子入りテストを受けにきました!!」
「フフ、よく来たなぼーやでは早速始めようか。お前のカンフーもどきで茶々丸に一撃でも入れられれば合格、手も足も出ずに貴様がくたばればそれまでだ」
「・・・・その条件でいいんですね?」
マスターを見上げる少年の顔はどこか自信に満ちた表情をしていた。
「・・・・ハッ、いいね~」
「なんだマコト? なにかあるのか?」
「いえいえ、どうぞはじめてください」
「まぁ、いいが・・・・そのギャラリーは何とかならんのかー!!」
ネギ先生の後方には親友である木乃香、刹那を含め、多くの美少女が少年先生を応援していた。
「・・・・っ」
「ン? ドウシタペット。泣イテンノカ?」
「ちげぇよ! 目に砂が入ったんだよ・・・・」
「オイ、ハジマッタゾ」
視線を戻せば、茶々丸とネギ先生がぶつかりあっていた。
「へー。あれがカンフーか・・・・基本手を多用する拳法みたいだな」
腕で防ぎ、足は独特の歩法と強く地面を蹴って攻撃力を底上げして。
絡み付くような攻撃。
「・・・・チッ」
「ケケケ、イライラスンナヨペット」
「やっぱ合わねぇーわ、ああいう戦い方」
フェイントとか誘いとか捌きとかそういうのは考えるだけでダレてくる。
やっぱ男は純粋な殴り合いだぜ!
「言ットクガ、アレガ普通ナンダゼ?」
「ケッ、どうせ俺は歪ですよ!」
「チッ・・・・」
マスターの舌打ちが響く。
「ケケケ、ゴキゲンナナメダナ御主人」
眼下には力なくその身を冷えたタイルに預けるネギ。
「残念だったなぼーや。だが、それが貴様の器だ顔を洗って出直してこい」
「へへへ。まだです・・・・まだ僕くたばってませんよエヴァンジェリンさん」
「ぬ? 何を言っている? 勝負はもう着いたぞガキは帰って寝ろ」
「でも条件は“僕がくたばるまで”でしたよね、それに確か時間制限もなかったと思いますけど?」
「な、まさか貴様・・・・」
「へへ・・・・その通り、一撃当てるまで何時間でも粘らせてもらいます」
それを聞いてマコトは口元を吊り上げていた。
ネギは再び茶々丸に突っ込んでいく、だがその動きは先程とは比べ物にならないほど劣化していた。
契約執行が切れたか・・・・。
当然茶々丸の反撃にあい、再び沈む。
だが、その一撃は明らかに手加減されていた。
「オラァ! 茶々丸!! 手加減すんじゃね! ネギは本気で戦ってるのにお前が手加減してどうすんだ!」
少し肌寒く感じる静かな夜にマコトの怒号が響く。
「で、でも」
「マコトさんの言う通りです、手加減されて合格しても意味はないですから」
ふんっ、女子陣からの視線が痛いが俺に後悔はない。
「マコト・・・・」
「なんですかマスター? 申し訳ないですが俺は止めませんよ。俺もネギと同じ立場なら同じ様な事をしたでしょうから」
「フンッ」
「いいじゃないですか~、ああいう真っ直ぐな眼は嫌いじゃない」
いつしかネギと茶々丸とのぶつかり合う音しか聞こえなくなっていた。
ネギの顔は今ではすっかり腫れ上がり、なんとも漢らしい顔になっていた。
「もう見てらんない止めてくる!!」
そう口にしたのはアスナだった。
「だめーアスナ! 止めちゃダメーっ!」
乾いた空気に波紋する快活な少女の声。佐々木まき絵は必死に嘆願する
「ここで止める方がネギ君にはひどいと思う、だってネギ君どんなことでもがんばるっていってたもん!!」
「でもっ、あいつのあれは子供のワガママじゃん。ただの意地っ張りだよ止めてあげなきゃ・・・・」
「違うよ、子供の意地っ張りであそこまで出来ないよ。上手く言えないけど、ネギ君には覚悟があると思う」
「か、覚悟?」
そう言われ、アスナはネギに視線移す。そこにはボロボロになりつつも必死に何かを掴もうと足掻く少年の姿があった。
「うん。ネギ君には目的があって・・・・そのために自分の全部でがんばるって決めてるんだよ。ネギ君は大人なんだよ、だって目的持ってがんばってるもん! だから今は止めちゃダメ」
ハハハハ・・・・俺の言いたい事全部言われちゃった。
「まき絵さん・・・・」
「あ。オイ茶々丸!!」
・・・・・。
・・・。
・・。
「あはははは! まさか茶々丸さんの油断で勝負が決まるとは・・・・ぷっ」
「・・・・マコトさん、今日の鍛錬は容赦しませんから」
「え!?」
「ケケケ、ペットガ茶々丸ヲ怒ラセタゼ、コレハ今日は愉シメソウダナ」
「そうだな今日はぼーやには負けたし、マコトで憂さを晴らすとしよう」
「え!? えええええええ!!!」
本山から戻ってきてから俺はすぐにマスターの家へとやってきた。
そこには大きなフラスコがあってその中には白い塔が建っていてまるで別の世界だーなどと感動しているといつの間にか別の場所に立っていた。
そこにはマスターと茶々丸さんと目つきの悪い人形がいて、マスターの話じゃあ此処は一応別荘なんだと。
しかも此処での一日は現実世界の1時間なんだとよ。
“我がペットに送るプレゼントだ”
などとちょっと気になる単語があったが、プレゼントだと言われたらやっぱり嬉しいもんだな。
それから私たち三人と戦えと言われ、今に至るわけだが・・・・。
「きっつ・・・・・」
息を整えつつ、青年はそう呟いた。
俺はいつも通り身体に魔力を流し身体強化をして一気にマスターまで迫る。
が、そんな事を許してくれる従者の茶々丸さんではない。
彼女が曲者だった。茶々丸さんの攻撃に合わせ、こちらも拳を放つ。
普段なら俺の拳は茶々丸さんに届き、俺も茶々丸さんの拳をもらう筈だったのだが・・・・現実には俺だけが茶々丸さんの拳をもらっていた。
ありえなかった。茶々丸さんは攻撃を繰り出すのと同時に防御も行えることを知った。
故に・・・・攻撃してくる→こちらも同時に攻撃→俺当たる→茶々丸ガード。
更に俺の攻撃をガードした後、茶々丸さんの立ち上がりが異状に早いときてる。
よって、俺ボコボコ。
この人本当に人間!?
「ケケケ。モラッタゼ!」
青年の死角から凶風がやってくる。
「お前は壊れる前にさがってろ!!」
青年の拳は風を切り人形の身体を捉える。
人形は30メートルほど吹き飛ぶが見事着地し、口元を吊り上げる。
「っ!」
なんだ? 肩が・・・・。
青年は肩に手をやると僅かだが口が開いて鮮血がだらしなく垂れていた。
冗談だろ!? どれだけ身体に魔力を流してると思ってるんだ!
“身体強化”凡そ魔法を扱うものなら必ず行っている魔法の基礎中の基礎。
基礎故に他の魔法使いならば“身体強化”を磨こうとは思わない。そんな事に時間を掛けるならもっと障壁や、防御魔法を覚えた方が確実だからである。
だが、マコトは違う。何故かはわからないがある程度の魔法しか使えなかった。だから両親に言われ、ただひたすらに身体に魔力を流し続けてきた。
結果として、マコトの“身体強化”は他に類を見ない程磨き上げられた代物となった。一度魔力を通せばその硬度はダイヤモンドの硬度を軽く越える。
魔法抵抗力も大幅にアップする。当然マコトにとって自身の身体強化には自信を持っている。さらにあの最強種を相手にしているのだ魔力の温存など無意味、全力で全身に魔力を流し続けている。
だが、自慢の身体強化がエヴァンジェリン本人ではなくその従者である気味の悪い人形に破られたのはショックを隠せないでいた。
「ケケケ、ソンナニ驚クコトハナイゼ? 今ノハ刃ニ御主人ノ魔力ヲ付与シタダケダゼ」
「マスターの魔力を付与・・・・」
つまりはあの刃に付与されたマスターの魔力の方が多かったということ。
これは更にキツくなった・・・・。茶々丸を抜けない上にいままで脅威ではなかった茶々ゼロの凶器が文字通り凶器になった・・・・。
「もういいだろうマコト・・・・」
砂金のような髪を風に揺らし、少女はつまらなそうに言う。
「ペットならペットらしく主人を癒し、愉しませろ。さもなければ早々に棄てるぞ?」
真紅の瞳がマコトを真っ直ぐ射抜く。
「愉しませる・・・・それはこういうことですか!!」
瞬間、青年の髪色が白銀に変化する。そして茶々丸と茶々ゼロの前から風の様に消える。
「わかってるじゃないかマコト!」
青年と少女はぶつかり合う。夕陽に照らされた二人の表情は不敵な笑みに染まっていた。
「え? ネギ先生がマスターに弟子入りを!?」
「うん、だからマコっちゃん。ちょっとネギ君見てあげてくれへん?」
放課後。日課であるマスターの別荘での鍛錬を終え、寮に帰る途中、木乃香に呼びつけられてやってきたわけだが・・・・。
「いや、見るって、なにを・・・・」
マコトの秘かな抗議は華麗にスルーされ、木乃香はマコトの手を掴んでズンズン進んでいく。
そして着いた先が世界樹近くの原っぱだった。
「こ、これは!?」
俺はついにあのアヴァロンに辿りついたのかもしれない。
目の前に広がるは3-Aという名の花畑、否、花園だった。
やはり、3-Aは女子の質が良い! これからはもっと3-Aとの合コンを積極的に企画していこう。
「マコっちゃん? なに泣きながら頷とるん?」
「え? いや、なんでもない」
マコトは一度咳払いをすると女性陣を意識しつつ、いつも通りを装う。
「んで? 俺に先生のなにを見ろって?」
なにやらこの二日前にネギ先生がマスターを訪ねて、弟子にして欲しいと言ったそうだ。
結果、テスト次第と判断されたらしい。内容は茶々丸さんに一撃入れろという物。
一見すると条件としては破格に見えるが、俺から言わせれば難題だ。
そして、相手の茶々丸さんと唯一戦ったことがある奴として俺が召喚されたらしい。
今のネギの動きを見て茶々丸さんに勝てるかどうかを見て欲しいそうだ。
そしていまネギ先生が俺の前でカンフーの型? なのか? とりあえず舞踊ような事をやってるんだが・・・・。
正直、カンフーの事はよくわからん。だが、その型はとても二日前に始めたようには見えない。
天才ってか・・・・。
「・・・・」
マコトは型を披露するネギにいきなり拳を放つ。
「っ!?」
だが、ネギはそれに気づくと瞬時にマコトの拳を捌く。
そしてお返しとばかりに拳を返した。
その拳はマコトの鳩尾を捉えていたが、寸前で止まる。
「きゃー♪」
一瞬張り詰めた空気を吹き飛ばす黄色い奇声。
「今の見た? 本当のアクション映画みたかったよネギくーん♪」
「これなら楽勝だね! さっすが天才少年!!」
興奮する女生徒達はネギを囲み、いろんな賛辞の言葉を口にする。
それを遠い目で見つめる青年が一人。夕陽の赤い陽射しが青年の涙の跡を照らした。
「嗚呼・・・・夕陽が沁みるな~」
いつしか、青年は一人世界樹の麓で膝を抱えて夕陽を見ていた。
「マ、マコト様?」
寂しい背中の青年に声を掛けたのは親友である刹那だった。
「刹那・・・・みんなは?」
「はい。シャワーを浴びにいかれましたが?」
「そっか・・・・それって酷くねぇ~か? 呼び出しといて人の話も聞かないでさ、しかも木乃香までいっちゃうとかさ・・・・もういいよ。どうせ俺なんて・・・・・」
「ところで、どうでしたかネギ先生は?」
膝を抱えて独り言を呪文のように口にする青年に刹那の少し張り詰めた声がかかる。
「無理だな。ってかお前自身もわかってるだろ?」
刹那の質問に即答する青年に同意を求められ、刹那は視線を逸らす。
「ネギ先生のカンフーは確かに凄いよ。とても二日前に始めたものとは思えない程の完成度だ」
だが、よく考えてみろ相手は茶々丸さん、俺から言わせれば近接戦闘術の達人だ。そんな相手に二日前に始めた付け焼刃の格闘術が通じる訳ねーだろ。
「まだ近接戦闘ド素人だった方が勝算はあったと思うけどな」
「それはどういう?」
「戦闘になったら相手を観察するだろ?」
「はい、もちろんです。相手の体格、姿格好、手にしている得物の種類、構えから相手の間合いを予想します」
「そう、それが普通。刀を構えて殺気を放ってくるならそいつは間違いなく剣道の有段者、同時に間合いも予想しやすいだろ?」
得物も持たず構えたならそいつは近接戦闘術に心得がある奴と予想できる。
その時点で相手がやってくる事は大方わかってしまう。
「刹那、もしもお前の前に立ちはだかった敵がなんの得物も持たず、なんの構えもせず、ただそこに立って殺気を放って、不敵に笑ってたらお前どうする?」
「・・・・うーん」
刹那は難しそうな顔をして答えを濁した。
「それだよ。なまじ多くの戦闘を経験してる者にこそ素人相手は戦い辛い。戦闘経験が豊富だからこそいろんな考えが頭の中を駆け巡る。得物は隠し持ってないかとか、構えがない格闘技なのかとか、見えない武器をもっているじゃないかとか、予想どころかありもしない妄想が出てくるものだ」
「確かに・・・・」
わかるところがあるのか刹那は恥ずかしげに頬を掻いた。
「だから、容易に攻められなくなる。達人だからこそ防御に徹するだろうな」
そして素人だからこそ戦い方はいくらでもある。だが、今のネギ先生はカンフー一辺倒・・・・だからこそ、間合いも攻撃パターンも予想しやすい。
「もし茶々丸さんが過去にカンフー有段者と戦っているなら尚、最悪だな」
「でも、ネギ先生ならやり遂げてしまうような気がします!」
か、確証はありませんけど・・・・と続ける刹那。
「そうだな。マスターに本気で教えを請いたいと思うならやるだろうな・・・・」
青年は空を仰ぐ、夕陽も沈み始めて赤と黒のコントラストの空が広がっていた。
「よし、刹那。俺達もシャワー行こうぜ!」
「えっ!? ええええええ! な、なななななに言ってるんですか!?」
「いいじゃん。昔はよく一緒に入ったじゃん」
「な、ななな何年前だと思ってるんですか!?」
「約一週間前に本山の大浴場で誰かさんが隠れてネギ先生と俺の入浴シーンを覗いてた奴が居たんだよなー」
「そ、それは@:^¥@:@・;@;・@!!」
・・・・・・。
・・・・。
・・・。
「そろそろ時間だな・・・・」
「オイペット、誰ガ下ロセナンテ言ッタ。チャント頭ニ乗セテロ」
時刻は午前0時世界樹の広場。
「ったく、外じゃ役立たずのくせに文句ばっか言いやがって」
「ケケケ、ソレヲ言ウナラ御主人ニ言エ」
マコトは渋々茶々ゼロをそっと頭に乗せた。
「アホか言えるわけねーだろ・・・・」
小さく呟いて横目でマスターを見る。マスターは茶々丸と何か話していた。
たかだか2日のカンフーで茶々丸さんに一撃か・・・・そんな事はまず不可能だ。
マスターもわかってる筈なんだけどな、ネギ先生のなにが見たいのかさっぱりわからん。まさかただの遊びなのか・・・・。
「エヴァンジェリンさーん、ネギ・スプリングフィールド弟子入りテストを受けにきました!!」
「フフ、よく来たなぼーやでは早速始めようか。お前のカンフーもどきで茶々丸に一撃でも入れられれば合格、手も足も出ずに貴様がくたばればそれまでだ」
「・・・・その条件でいいんですね?」
マスターを見上げる少年の顔はどこか自信に満ちた表情をしていた。
「・・・・ハッ、いいね~」
「なんだマコト? なにかあるのか?」
「いえいえ、どうぞはじめてください」
「まぁ、いいが・・・・そのギャラリーは何とかならんのかー!!」
ネギ先生の後方には親友である木乃香、刹那を含め、多くの美少女が少年先生を応援していた。
「・・・・っ」
「ン? ドウシタペット。泣イテンノカ?」
「ちげぇよ! 目に砂が入ったんだよ・・・・」
「オイ、ハジマッタゾ」
視線を戻せば、茶々丸とネギ先生がぶつかりあっていた。
「へー。あれがカンフーか・・・・基本手を多用する拳法みたいだな」
腕で防ぎ、足は独特の歩法と強く地面を蹴って攻撃力を底上げして。
絡み付くような攻撃。
「・・・・チッ」
「ケケケ、イライラスンナヨペット」
「やっぱ合わねぇーわ、ああいう戦い方」
フェイントとか誘いとか捌きとかそういうのは考えるだけでダレてくる。
やっぱ男は純粋な殴り合いだぜ!
「言ットクガ、アレガ普通ナンダゼ?」
「ケッ、どうせ俺は歪ですよ!」
「チッ・・・・」
マスターの舌打ちが響く。
「ケケケ、ゴキゲンナナメダナ御主人」
眼下には力なくその身を冷えたタイルに預けるネギ。
「残念だったなぼーや。だが、それが貴様の器だ顔を洗って出直してこい」
「へへへ。まだです・・・・まだ僕くたばってませんよエヴァンジェリンさん」
「ぬ? 何を言っている? 勝負はもう着いたぞガキは帰って寝ろ」
「でも条件は“僕がくたばるまで”でしたよね、それに確か時間制限もなかったと思いますけど?」
「な、まさか貴様・・・・」
「へへ・・・・その通り、一撃当てるまで何時間でも粘らせてもらいます」
それを聞いてマコトは口元を吊り上げていた。
ネギは再び茶々丸に突っ込んでいく、だがその動きは先程とは比べ物にならないほど劣化していた。
契約執行が切れたか・・・・。
当然茶々丸の反撃にあい、再び沈む。
だが、その一撃は明らかに手加減されていた。
「オラァ! 茶々丸!! 手加減すんじゃね! ネギは本気で戦ってるのにお前が手加減してどうすんだ!」
少し肌寒く感じる静かな夜にマコトの怒号が響く。
「で、でも」
「マコトさんの言う通りです、手加減されて合格しても意味はないですから」
ふんっ、女子陣からの視線が痛いが俺に後悔はない。
「マコト・・・・」
「なんですかマスター? 申し訳ないですが俺は止めませんよ。俺もネギと同じ立場なら同じ様な事をしたでしょうから」
「フンッ」
「いいじゃないですか~、ああいう真っ直ぐな眼は嫌いじゃない」
いつしかネギと茶々丸とのぶつかり合う音しか聞こえなくなっていた。
ネギの顔は今ではすっかり腫れ上がり、なんとも漢らしい顔になっていた。
「もう見てらんない止めてくる!!」
そう口にしたのはアスナだった。
「だめーアスナ! 止めちゃダメーっ!」
乾いた空気に波紋する快活な少女の声。佐々木まき絵は必死に嘆願する
「ここで止める方がネギ君にはひどいと思う、だってネギ君どんなことでもがんばるっていってたもん!!」
「でもっ、あいつのあれは子供のワガママじゃん。ただの意地っ張りだよ止めてあげなきゃ・・・・」
「違うよ、子供の意地っ張りであそこまで出来ないよ。上手く言えないけど、ネギ君には覚悟があると思う」
「か、覚悟?」
そう言われ、アスナはネギに視線移す。そこにはボロボロになりつつも必死に何かを掴もうと足掻く少年の姿があった。
「うん。ネギ君には目的があって・・・・そのために自分の全部でがんばるって決めてるんだよ。ネギ君は大人なんだよ、だって目的持ってがんばってるもん! だから今は止めちゃダメ」
ハハハハ・・・・俺の言いたい事全部言われちゃった。
「まき絵さん・・・・」
「あ。オイ茶々丸!!」
・・・・・。
・・・。
・・。
「あはははは! まさか茶々丸さんの油断で勝負が決まるとは・・・・ぷっ」
「・・・・マコトさん、今日の鍛錬は容赦しませんから」
「え!?」
「ケケケ、ペットガ茶々丸ヲ怒ラセタゼ、コレハ今日は愉シメソウダナ」
「そうだな今日はぼーやには負けたし、マコトで憂さを晴らすとしよう」
「え!? えええええええ!!!」
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