お尻を出した子一等賞。
只今、ネギま書き直し中~♪ ネタバレにご注意を。
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真・マコト(メインディッシュパート1)
麻帆良に帰ってきてからどれくらい経ったのか・・・・。
寮にも帰らず、学校にも行かず、ただ人気を避けて学園都市内を転々とし、空を仰ぐだけ。
「なにやってんだ俺は・・・・」
寮にも帰らず、学校にも行かず、ただ人気を避けて学園都市内を転々とし、空を仰ぐだけ。
「なにやってんだ俺は・・・・」
そう呟き、再び空を仰ぐ青年。
空は漆黒の雲に覆われていた。
「マコトさんどうしたのでしょう?」
茶々丸は隣で休む自らの主にそう訊く。
「・・・・ふんっ、放って置け」
だが主は読書をしながらそう吐き棄てた。
遠くではこの別荘に勝手に入ってきた珍客の楽しそうな声が響く。
「誰かが不幸な目にあっていようと、死んでいようと、絶望に沈む者がいようと、時は止まらず流れ続けるか・・・・」
エヴァンジェリンは楽しそうに騒ぐ少年少女達を遠目にそう呟いた。
「マスター?」
茶々丸の掛けた声にも反応せず、ただ詰まらなそうに鼻を鳴らすだけだった。
「えいっ、てやっ、あーん、でーへん~~~」
「そんなすぐにはできませんよ」
「せっちゃんはやらへんの?」
「私はできますから・・・・」
そう言い、刹那は一つの梵字を口ずさむとその一指し指から小さな火が発現する。
「キャーッスゴーイせっちゃん♪」
木乃香はむーっと練習用の杖を睨むをまたブンブンと振り回して練習に戻った。
「・・・・」
その光景はなんとも微笑ましいのだが、桜咲 刹那の心は晴れなかった。
2日前、突然現れたマコトの母から言われた言葉が気になっている。
“しばらくあの子を放っておいてくれないかしら”
その理由を聞こうとしたが、放置しておく事だけを念押され逃げられてしまった。
刹那は納得がいかず、マコトを捜して話を聞こうとしたが近づく前に本山の梟の者に邪魔されたのだった。
「実行部隊、桜咲 刹那。奥方の命が聞こえなかったのか?」
「なっ!? 梟がなぜ此処に!」
「もう一度訊く、奥方の命が聞こえなかったのか?」
男が放つ殺気がより
濃密になり空気を張り詰めていく。
「・・・・いや、了解した」
梟は精鋭部隊の一つ。そして先程の殺気、そう簡単に勝てる相手じゃない。
さらに此処は学園、無関係の人間を巻き込むわけにはいかない。
刹那は握り拳を作り、下唇を噛んだ。
「・・・・できるなら一つだけ教えて貰いたい」
刹那は男に背を向けたままつづける。
「マコト様は重度の怪我でも負っているのか?」
「・・・・身体的外傷はない」
男は素っ気無くそう告げた。
それでも刹那はありがとうと礼を言ってその場を離れた。
怪我を負ったのではないとなると一体何が・・・・。
遠く、小さくなっていく刹那の後ろ姿を見届け、男は再びマコトの護衛を再開するために身体の向きを変えた瞬間、自分の脚に違和感を覚え視線を向けると自分の足首が石となり、物のように転がっていた。
「・・・・しまっ!?」
男は言い切る前に物言わぬ石像と化す。
そして男の石像に手を乗せる黒地のコートを着た紳士。
紳士の視線の先には意味も無く曇天の空を仰ぐマコトの姿があった。
「悪魔パンチ(デーモニッシェア・シュラーク)!」
突然紳士から放たれる一条の光はマコトを直撃し、紙切れの様に宙に舞うマコト。
紳士からの攻撃をまともに喰らったマコトは受身も取れず地面に叩き付けれる。
「こ、この技は・・・・」
マコトはなんとか身を起こすが、視界はすでに歪み、ぼやけ、程よい吐き気がマコトを襲う。
「彼女の悪魔パンチも効いただろ?」
歪んだ視界からは黒い何かがゆっくりと近づいてくる事しか認識できなかった。
「そうか、アンタが彼女の契約者か・・・・」
「初めまして、徳川 マコト君。わたくしヴィルヘルム・ヨーゼフ・ホォン・ヘルマンと申します」
紳士はそう言い、仰々しく頭を下げる。
「人間と直接契約出来るのは上位の悪魔だけと聞く。という事はお前も・・・・」
マコトはフラツキながらも何とか立ち上がる。
「ハハハ、勉強はしてるみたいだねマコト君」
紳士は帽子を取るとその顔は人間の顔から薄気味悪い悪魔の顔へと変わる。
「どうしたねマコト君? 掛かって来ないのかね?」
「・・・・」
コイツが彼女に出会わなければ、恐らく彼女は今も生きているだろう。
だが、結局彼女は救われない。繋がれたまま生きていくことになっただろう。
もうわからない。戦おうという意志が出てこない。
いや、違うな・・・・思い出したくないだけか・・・・。
「フンっ!」
瞬間、間合いを詰め、ヘルマンの拳がマコトの腹部に突き刺さる。
「カハッ!?」
マコトの膝が簡単に折れ、腹部を抑え蹲るマコト。
ヘルマンは容赦なく、そんなマコトの髪を掴んで無理やりマコトの頭を持ち
「私はね、今日と言う日を楽しみにしていたのだがね。エゴイストの塊だった彼女を倒す程の青年がネギ君とセットでこの学園に居ると聞いてね」
「・・・・」
ヘルマンはマコトの顔を暫く見つめると溜息を一つ吐く。
マコトの身体をゼリーの様な物が包む。
そしてゆっくりとマコトはヘルマンの前から姿を消した。
“勝手に背負って苦しんで、自分への戒めと彼女への償いのつもりかね? 気持ち悪い”
いつしか麻帆良に雨が降り始めていた。
・・・・・。
・・・・。
・・・。
「・・・・っ!!」
誰かが叫んでる・・・・。
「マコト様っ!! しっかりしてください!!」
刹那か・・・・。
刹那は水牢の中で必死にマコトに呼びかける。
「マコト様!!」
刹那は目を覚まし、周りを見た時ほど自分の不甲斐無さを呪った事はなかった。
アスナはステージ上に縛られ、自分のクラスメイトとお嬢様が別の水牢に閉じ込められている。
刹那はすぐに行動に出ようとしたが、身体が痺れてうまく動けずにいた。
なにか飲まされたのか、それとも何かの術なのかわからないが、集中して気が練れない状態にあった。
観客席の方ではネギ先生と修学旅行の時に襲ってきた狗族の少年が共同戦線をはって、男と戦っている。
だが、戦いはネギ達の旗色が明らかに悪かった。
“なんとかしなくては!!”
刹那は何か無いかと今一度回りを見渡す。
すると自分と同じ水牢の中にもう一人居ることに気付く。
本来ならばすぐ気が付くのだが、その者からは何も感じられなかった。
生気はもちろん、覇気などまったくない者が蹲っていた。
“なんだコレは? 死体か?”
刹那は満足に動かない身体を引き摺る様に恐る恐るその者に近付き、見ると紛れもなくマコトだった。
「マコト様!!」
“マコト様ならきっと・・・・”
刹那の心の中で安堵の表情が広がっていく。
マコト様がいるならこの状況を必ず打破できると思ったからこそ刹那は何度もマコトの名を呼んだ。
マコトから生気も覇気も感じない事を忘れて・・・・。
刹那はなんとか動く手を伸ばし、マコトの身体を揺さぶる。
だが、その手を払うマコト。
「・・・・え?」
「やめてくれ・・・・暫く一人にしてくれ」
拒絶。
刹那は何を言われたのか理解出来ず、もう一度手を伸ばす。
「マコト様・・・・」
「やめてくれ・・・・放っておいてくれ」
水牢に響く覇気のない声。
これがあのマコト様なのか? 奇形児と呼ばれ、無能と嘲られても尚、笑顔を絶やさずただ前に進んで行ったあの・・・・。
刹那の脳裏に、マコトの笑顔が浮かぶ。
「貴様らあああああ!!! マコト様に何をしたぁああああ!!」
ステージから刹那の絶叫が響き渡る。
「せっちゃん! マコっちゃんがどないしたん?」
「・・・・まるで抜け殻の様なのです」
「ふぅ、私たちは何もしておらんよ彼が勝手に苦しんでいるだけの事。あ、そうそう一つ訊いておきたい事があるんだマコト君」
“君は覚悟の上であの娘を殺したのではないのかね?”
その場の空気が一瞬で凍りつく。
「ハハハハッ、日本育ちのお嬢さん方には少々刺激が強すぎたか」
「嘘や!! マコっちゃんがそんな事する筈ないもん!!」
水牢の中の木乃香は目に涙を溜めてそう口にした。
「残念ながら嘘ではないのだよコノエコノカ。そこの彼はまだ12歳の少女の命を奪ったのさ、直接的ではないが結果的に彼が殺したのだよ」
「せっちゃん!! せっちゃんからもあのおっちゃんに何とか・・・・」
木乃香はしゃがれた声で刹那に同意を求める。同じ幼馴染の彼女ならマコっちゃんがそんな事する筈がない!! と言い切ってくれる。
「・・・・」
だが、刹那は顔を俯かせ、唇を噛み締めていた。
「なんで・・・・何も言ってくれへんの? せっちゃん!!」
木乃香はそのまま泣き崩れてしまう。
「ネギ君、君は彼女達を助ける気はあるのかね? 人の事ばかり気にして本気で戦っていないのではないかね?」
「な、なにを!? 僕は本気で戦ってます!!」
その声の残響を聞きながら、刹那はもう一度マコトに振り向く。
先程よりも痺れが和らぎ、ぎこちない動きでマコトの傍までくると蹲るマコトを包み込む様に抱きしめた。
「マコト様、いろいろと辛い目にあったそうですね・・・・」
刹那は呟くようにそう続ける。
「私にはマコト様がどんな経験をしたのかはわかりません。貴方が何を悔やんでいるのかも・・・・ですが言わせてください」
“このまま何もかも棄てて逃げ出すのですか?”
「っ!?」
一瞬マコト身体が反応する。
「いままでマコト様が取り返した物や、守ってきた物、育んできた物、全て棄てて現実から目を逸らしてこんな風に塞ぎ込んで生きていくつもりですか!」
“夢に向かって走り出したから途中で投げ出して逃げる訳にはいかないの”
“沢山の人から命や時間、想いや夢を奪ったから”
“最後の時まで諦める訳にはいかないの”
聞こえてくるのはあの時、少女が語った覚悟。
つたわってくるのは親友の体温。
「・・・・刹那」
突然呼ばれ、戸惑う刹那。
「・・・・もう少しだけ、そうしててくれ。今戻るからよ」
「はい!!」
刹那は目に涙を溜めながら精一杯強くマコトを抱きしめた。
少女は言った、奪った以上は諦める訳にはいかないと!
だったら俺は少女以上に諦める訳にはいかんな、悪役らしく奪ったのなら最後の時まで演じなければなフック船長の手下を・・・・。
「刹那、キスしてくれ・・・・」
「は、はい・・・・って、えええええええ!?」
「フッ、ハハハハ。冗談だよ・・・・」
マコトはスッと立ち上がると空を仰ぐ、いつしか雨は止み、雲の間から月明かりが射していた。
「うっし、で、なにすりゃいいんだ?」
「そう言われると私も現状況を理解してないので」
見るとネギと小太郎が漫才してた。
「まぁ、とりあえずアスナ姐さんがキーっぽいから第一目標で第二がスライム娘、封魔の小瓶投げるから封印頼む。第三があの子達、OK?」
「あの、私まだ痺れてるんですが・・・・」
「その辺は気合でよろしく」
勢いよく親指を立てるマコト。
一つの水牢がなんの前触れもなく破裂する。
「なんだ!?」
瞬間、マコトの姿はアスナの前にあった。
「助けに来ましたよお嬢さん」
「マコトさん!? いいから! 早くペンダント取って!!」
何故か急かされわけもわからずペンダントを取るマコト。
「これ以上はさせねーぜ!」
マコトはすぐに身を翻し、落ちている小瓶を足で刹那にパス。
「わ、ととと。封魔の瓶(ラゲーナ・シグナートーリア)」
瞬間、魔法陣が発現し三体のスライムを封印する。
「さぁ、後の事は任せて行け二人とも!!」
「マコトさん!」
「やるやないかにーちゃん」
そして、一振りの雷の斧によって事態は収拾する。
「君たちの勝ちだトドメを刺さなくていいのかね?」
「僕・・・・トドメは刺しません」
この二人の間になにかあるみたいだが・・・・まぁ、俺には関係ないか。
「マコト君、背負って生きていくことを決意したようだな」
「ああ、ありがとうなおっさん。あんたには感謝してる」
「ハハハハッ、今の君とやり合いたかったよ。おっとそうだWitchcraftという本を探し、読んでみたまえきっと楽しくなる。噂ではとある最強種が持っているらしいぞ」
そう言い残し、おっさんは消えていった。
そして気が付けば木乃香が俯きながら俺の前に立っていた・・・・。
空は漆黒の雲に覆われていた。
「マコトさんどうしたのでしょう?」
茶々丸は隣で休む自らの主にそう訊く。
「・・・・ふんっ、放って置け」
だが主は読書をしながらそう吐き棄てた。
遠くではこの別荘に勝手に入ってきた珍客の楽しそうな声が響く。
「誰かが不幸な目にあっていようと、死んでいようと、絶望に沈む者がいようと、時は止まらず流れ続けるか・・・・」
エヴァンジェリンは楽しそうに騒ぐ少年少女達を遠目にそう呟いた。
「マスター?」
茶々丸の掛けた声にも反応せず、ただ詰まらなそうに鼻を鳴らすだけだった。
「えいっ、てやっ、あーん、でーへん~~~」
「そんなすぐにはできませんよ」
「せっちゃんはやらへんの?」
「私はできますから・・・・」
そう言い、刹那は一つの梵字を口ずさむとその一指し指から小さな火が発現する。
「キャーッスゴーイせっちゃん♪」
木乃香はむーっと練習用の杖を睨むをまたブンブンと振り回して練習に戻った。
「・・・・」
その光景はなんとも微笑ましいのだが、桜咲 刹那の心は晴れなかった。
2日前、突然現れたマコトの母から言われた言葉が気になっている。
“しばらくあの子を放っておいてくれないかしら”
その理由を聞こうとしたが、放置しておく事だけを念押され逃げられてしまった。
刹那は納得がいかず、マコトを捜して話を聞こうとしたが近づく前に本山の梟の者に邪魔されたのだった。
「実行部隊、桜咲 刹那。奥方の命が聞こえなかったのか?」
「なっ!? 梟がなぜ此処に!」
「もう一度訊く、奥方の命が聞こえなかったのか?」
男が放つ殺気がより
濃密になり空気を張り詰めていく。
「・・・・いや、了解した」
梟は精鋭部隊の一つ。そして先程の殺気、そう簡単に勝てる相手じゃない。
さらに此処は学園、無関係の人間を巻き込むわけにはいかない。
刹那は握り拳を作り、下唇を噛んだ。
「・・・・できるなら一つだけ教えて貰いたい」
刹那は男に背を向けたままつづける。
「マコト様は重度の怪我でも負っているのか?」
「・・・・身体的外傷はない」
男は素っ気無くそう告げた。
それでも刹那はありがとうと礼を言ってその場を離れた。
怪我を負ったのではないとなると一体何が・・・・。
遠く、小さくなっていく刹那の後ろ姿を見届け、男は再びマコトの護衛を再開するために身体の向きを変えた瞬間、自分の脚に違和感を覚え視線を向けると自分の足首が石となり、物のように転がっていた。
「・・・・しまっ!?」
男は言い切る前に物言わぬ石像と化す。
そして男の石像に手を乗せる黒地のコートを着た紳士。
紳士の視線の先には意味も無く曇天の空を仰ぐマコトの姿があった。
「悪魔パンチ(デーモニッシェア・シュラーク)!」
突然紳士から放たれる一条の光はマコトを直撃し、紙切れの様に宙に舞うマコト。
紳士からの攻撃をまともに喰らったマコトは受身も取れず地面に叩き付けれる。
「こ、この技は・・・・」
マコトはなんとか身を起こすが、視界はすでに歪み、ぼやけ、程よい吐き気がマコトを襲う。
「彼女の悪魔パンチも効いただろ?」
歪んだ視界からは黒い何かがゆっくりと近づいてくる事しか認識できなかった。
「そうか、アンタが彼女の契約者か・・・・」
「初めまして、徳川 マコト君。わたくしヴィルヘルム・ヨーゼフ・ホォン・ヘルマンと申します」
紳士はそう言い、仰々しく頭を下げる。
「人間と直接契約出来るのは上位の悪魔だけと聞く。という事はお前も・・・・」
マコトはフラツキながらも何とか立ち上がる。
「ハハハ、勉強はしてるみたいだねマコト君」
紳士は帽子を取るとその顔は人間の顔から薄気味悪い悪魔の顔へと変わる。
「どうしたねマコト君? 掛かって来ないのかね?」
「・・・・」
コイツが彼女に出会わなければ、恐らく彼女は今も生きているだろう。
だが、結局彼女は救われない。繋がれたまま生きていくことになっただろう。
もうわからない。戦おうという意志が出てこない。
いや、違うな・・・・思い出したくないだけか・・・・。
「フンっ!」
瞬間、間合いを詰め、ヘルマンの拳がマコトの腹部に突き刺さる。
「カハッ!?」
マコトの膝が簡単に折れ、腹部を抑え蹲るマコト。
ヘルマンは容赦なく、そんなマコトの髪を掴んで無理やりマコトの頭を持ち
「私はね、今日と言う日を楽しみにしていたのだがね。エゴイストの塊だった彼女を倒す程の青年がネギ君とセットでこの学園に居ると聞いてね」
「・・・・」
ヘルマンはマコトの顔を暫く見つめると溜息を一つ吐く。
マコトの身体をゼリーの様な物が包む。
そしてゆっくりとマコトはヘルマンの前から姿を消した。
“勝手に背負って苦しんで、自分への戒めと彼女への償いのつもりかね? 気持ち悪い”
いつしか麻帆良に雨が降り始めていた。
・・・・・。
・・・・。
・・・。
「・・・・っ!!」
誰かが叫んでる・・・・。
「マコト様っ!! しっかりしてください!!」
刹那か・・・・。
刹那は水牢の中で必死にマコトに呼びかける。
「マコト様!!」
刹那は目を覚まし、周りを見た時ほど自分の不甲斐無さを呪った事はなかった。
アスナはステージ上に縛られ、自分のクラスメイトとお嬢様が別の水牢に閉じ込められている。
刹那はすぐに行動に出ようとしたが、身体が痺れてうまく動けずにいた。
なにか飲まされたのか、それとも何かの術なのかわからないが、集中して気が練れない状態にあった。
観客席の方ではネギ先生と修学旅行の時に襲ってきた狗族の少年が共同戦線をはって、男と戦っている。
だが、戦いはネギ達の旗色が明らかに悪かった。
“なんとかしなくては!!”
刹那は何か無いかと今一度回りを見渡す。
すると自分と同じ水牢の中にもう一人居ることに気付く。
本来ならばすぐ気が付くのだが、その者からは何も感じられなかった。
生気はもちろん、覇気などまったくない者が蹲っていた。
“なんだコレは? 死体か?”
刹那は満足に動かない身体を引き摺る様に恐る恐るその者に近付き、見ると紛れもなくマコトだった。
「マコト様!!」
“マコト様ならきっと・・・・”
刹那の心の中で安堵の表情が広がっていく。
マコト様がいるならこの状況を必ず打破できると思ったからこそ刹那は何度もマコトの名を呼んだ。
マコトから生気も覇気も感じない事を忘れて・・・・。
刹那はなんとか動く手を伸ばし、マコトの身体を揺さぶる。
だが、その手を払うマコト。
「・・・・え?」
「やめてくれ・・・・暫く一人にしてくれ」
拒絶。
刹那は何を言われたのか理解出来ず、もう一度手を伸ばす。
「マコト様・・・・」
「やめてくれ・・・・放っておいてくれ」
水牢に響く覇気のない声。
これがあのマコト様なのか? 奇形児と呼ばれ、無能と嘲られても尚、笑顔を絶やさずただ前に進んで行ったあの・・・・。
刹那の脳裏に、マコトの笑顔が浮かぶ。
「貴様らあああああ!!! マコト様に何をしたぁああああ!!」
ステージから刹那の絶叫が響き渡る。
「せっちゃん! マコっちゃんがどないしたん?」
「・・・・まるで抜け殻の様なのです」
「ふぅ、私たちは何もしておらんよ彼が勝手に苦しんでいるだけの事。あ、そうそう一つ訊いておきたい事があるんだマコト君」
“君は覚悟の上であの娘を殺したのではないのかね?”
その場の空気が一瞬で凍りつく。
「ハハハハッ、日本育ちのお嬢さん方には少々刺激が強すぎたか」
「嘘や!! マコっちゃんがそんな事する筈ないもん!!」
水牢の中の木乃香は目に涙を溜めてそう口にした。
「残念ながら嘘ではないのだよコノエコノカ。そこの彼はまだ12歳の少女の命を奪ったのさ、直接的ではないが結果的に彼が殺したのだよ」
「せっちゃん!! せっちゃんからもあのおっちゃんに何とか・・・・」
木乃香はしゃがれた声で刹那に同意を求める。同じ幼馴染の彼女ならマコっちゃんがそんな事する筈がない!! と言い切ってくれる。
「・・・・」
だが、刹那は顔を俯かせ、唇を噛み締めていた。
「なんで・・・・何も言ってくれへんの? せっちゃん!!」
木乃香はそのまま泣き崩れてしまう。
「ネギ君、君は彼女達を助ける気はあるのかね? 人の事ばかり気にして本気で戦っていないのではないかね?」
「な、なにを!? 僕は本気で戦ってます!!」
その声の残響を聞きながら、刹那はもう一度マコトに振り向く。
先程よりも痺れが和らぎ、ぎこちない動きでマコトの傍までくると蹲るマコトを包み込む様に抱きしめた。
「マコト様、いろいろと辛い目にあったそうですね・・・・」
刹那は呟くようにそう続ける。
「私にはマコト様がどんな経験をしたのかはわかりません。貴方が何を悔やんでいるのかも・・・・ですが言わせてください」
“このまま何もかも棄てて逃げ出すのですか?”
「っ!?」
一瞬マコト身体が反応する。
「いままでマコト様が取り返した物や、守ってきた物、育んできた物、全て棄てて現実から目を逸らしてこんな風に塞ぎ込んで生きていくつもりですか!」
“夢に向かって走り出したから途中で投げ出して逃げる訳にはいかないの”
“沢山の人から命や時間、想いや夢を奪ったから”
“最後の時まで諦める訳にはいかないの”
聞こえてくるのはあの時、少女が語った覚悟。
つたわってくるのは親友の体温。
「・・・・刹那」
突然呼ばれ、戸惑う刹那。
「・・・・もう少しだけ、そうしててくれ。今戻るからよ」
「はい!!」
刹那は目に涙を溜めながら精一杯強くマコトを抱きしめた。
少女は言った、奪った以上は諦める訳にはいかないと!
だったら俺は少女以上に諦める訳にはいかんな、悪役らしく奪ったのなら最後の時まで演じなければなフック船長の手下を・・・・。
「刹那、キスしてくれ・・・・」
「は、はい・・・・って、えええええええ!?」
「フッ、ハハハハ。冗談だよ・・・・」
マコトはスッと立ち上がると空を仰ぐ、いつしか雨は止み、雲の間から月明かりが射していた。
「うっし、で、なにすりゃいいんだ?」
「そう言われると私も現状況を理解してないので」
見るとネギと小太郎が漫才してた。
「まぁ、とりあえずアスナ姐さんがキーっぽいから第一目標で第二がスライム娘、封魔の小瓶投げるから封印頼む。第三があの子達、OK?」
「あの、私まだ痺れてるんですが・・・・」
「その辺は気合でよろしく」
勢いよく親指を立てるマコト。
一つの水牢がなんの前触れもなく破裂する。
「なんだ!?」
瞬間、マコトの姿はアスナの前にあった。
「助けに来ましたよお嬢さん」
「マコトさん!? いいから! 早くペンダント取って!!」
何故か急かされわけもわからずペンダントを取るマコト。
「これ以上はさせねーぜ!」
マコトはすぐに身を翻し、落ちている小瓶を足で刹那にパス。
「わ、ととと。封魔の瓶(ラゲーナ・シグナートーリア)」
瞬間、魔法陣が発現し三体のスライムを封印する。
「さぁ、後の事は任せて行け二人とも!!」
「マコトさん!」
「やるやないかにーちゃん」
そして、一振りの雷の斧によって事態は収拾する。
「君たちの勝ちだトドメを刺さなくていいのかね?」
「僕・・・・トドメは刺しません」
この二人の間になにかあるみたいだが・・・・まぁ、俺には関係ないか。
「マコト君、背負って生きていくことを決意したようだな」
「ああ、ありがとうなおっさん。あんたには感謝してる」
「ハハハハッ、今の君とやり合いたかったよ。おっとそうだWitchcraftという本を探し、読んでみたまえきっと楽しくなる。噂ではとある最強種が持っているらしいぞ」
そう言い残し、おっさんは消えていった。
そして気が付けば木乃香が俯きながら俺の前に立っていた・・・・。
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