お尻を出した子一等賞。
只今、ネギま書き直し中~♪ ネタバレにご注意を。
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真・その名はマコト(メインディッシュパート3)
ただ真っ直ぐにあのガキが走っていった道を走る。
辺りは白い霧に包まれ、自分がどこを走っているからなんてわからない。
だが、あのガキを捕まえる事だけを考えてマコトは白い霧の中を走る。
しばらく走ると突然霧が晴れ、フェンスの無い何処かのビルの屋上に出る。
辺りは白い霧に包まれ、自分がどこを走っているからなんてわからない。
だが、あのガキを捕まえる事だけを考えてマコトは白い霧の中を走る。
しばらく走ると突然霧が晴れ、フェンスの無い何処かのビルの屋上に出る。
「ここは・・・・」
何処か見覚えのある風景、空には妖しく光る月がマコトを見下ろしてした。
隣接するビルの屋上から気配を感じ、そちらに視線を向けると少女と青年の姿があった。
「やれやれ、精神攻撃ってか・・・・」
マコトは溜息混じりにそう呟いた。
「・・・・こんばんわ」
突然、マコトの隣に現れた男。それはどこからどう見ても、紛れも無く、“マコト”だった。
「こいつは驚いた、目の前に俺がいるわ」
「よう、俺。元気か?」
「ああ、おかげ様でな」
瞬間、遠くから轟音と砂煙が上がる。
青年と少女がぶつかり合っていた。
「結局、戦う事になっちゃったんだよな~」
「ああ、そうだな」
二人のマコトは過去の自分の姿を目で追いながら語り合う。
「彼女だけの味方になる覚悟は無いけれど彼女を助けたいと思っている。彼女のを救うにはそれしかないというのに。本当に馬鹿だな」
「ああ、そうだな」
「ほら見ろよ、結局は彼女を殺してしまっただけというお粗末な結果じゃん。親父がやろうとした事を代わりにやっただけじゃん、なんだかんだと言ってたくせに」
「ああ、そうだな」
「覚悟を決めたとかなんとか言っておいて、学校に帰ってきた途端、自責の念に囚われて勝手に心を閉ざして。覚悟なんてまったく出来てなかったんじゃないか」
「ああ、そうだな」
瞬間、多くを語っていたマコトがもう一方のマコトに掴み掛かる。
「さっきからなんだお前! いい加減な返事ばかりしやがって!」
「・・・・はぁ。だったら何て言ったら良いんだ?“違う!”って、お前に掴み掛かればよかったのか? そして俺は俺自身を殴るのか? そんな精神的にも肉体的にも痛いことしてどうなるんだよ。此処で否定して何か変わるのか? 俺はさ、今めっちゃワクワクしてるんだ、そりゃもうドラ○ンボールの主人公並みにな!」
「え?」
「アスモデウスの知識と力、マスターの別荘の機能、そしてなによりも今年魔帆良の世界樹に起こる最大イベントを組み合わせたら最高の公式ができあがるだろうが!!」
そう言うと目の前の等身大のマコトは幼少の頃の姿となっていた。
小さなマコトは肩を震わせ、涙を拭いながら言う。
「そんなことしたら皆に嫌われちゃうよ・・・・」
「俺一人嫌われても何の問題もないさ・・・・と、自己陶酔してみる」
「・・・・あの子の為?」
気にせず続ける幼少のマコト。
「いや、違うな・・・・」
俺は彼女の為になる事は何も出来なかった。ただ殺して、彼女の夢をぶっ壊しただけの悪党。だから今俺の頭の中にある計画は彼女の為でも無く、世界で苦しんでいる子供達の為でもない。
「ただ、自己陶酔しきった馬鹿が無謀にも世界を混乱の渦に巻き込もうと考えただけの計画だ」
小さなマコトは消え入りそうな声で“それでいいんだね”と口にした。
「ああ。おら、いつまでも泣いてないで行くぞ」
すっと小さなマコトに手を差し伸べるマコト。
「なに不思議そうな顔してんだよ、弱くて臆病で泣き虫のお前も入れて俺だろうが。やってやろうぜ?」
小さなマコトがマコトの手を取ると、小さなマコトは光となって消えていく。
「うっし! いっちょやってみるか!!」
青年は片腕をグルグルと回しながらその場を後にする。
その後姿を少女二人は遠目に見ていたのだった。
「・・・・もう。泣くの止めや」
木乃香は消え入りそうな声でそう言う。
「・・・・はい」
「いつまでも泣いてたらマコっちゃんはどんどん先に行ってしまう」
先ほどまで俯き気味だった顔を上げ、木乃香は強く拳を握る。
「いまはウチの出来ることでマコっちゃんをサポートしていくだけや」
涙を拭い、再び立ち上がる少女の表情は僅かに大人び、凛としていた。
「フッ、そうですね! マコト様はいつもドンドン先に行かれますから私達も必死に追いかけないといけませんね?」
「うん。あの愚か者の唇を奪いにいくぞ~!!」
「ええええ!? まさかお嬢様!?」
「さぁ、いくで~」
と、意気揚々と駆け出す木乃香。
「おお、お嬢様!? 本気ですか!?」
「ん? 当たり前やろ~。あっ、せっちゃんから先にする?」
「ええええ!!!」
※ ※ ※
「よく取り戻したわね、心の欠片を。拒絶する人が多いのに・・・・」
「因みに拒絶したらどうなるんだ?」
“自分の心を拒絶した者がどうなるかなんて簡単に想像できるでしょ”
た、確かに・・・・。
「さぁ、契約といきましょう。」
「おう、頼む。」
すると、女性は何か思い出した様にポンと手を叩くと。
「そうそう言い忘れてたけど。私のクラスになると契約は魂の契約と言って、簡単に言えば私が貴方の魂と融合するって事なんだけど・・・・」
そこまで言い、女性は瞳を細め、口元を歪め――――
“大抵、私の魂が強すぎて貴方の魂を塗り潰しちゃうわ”
――――と、なんとも嬉しそうに言った。
「・・・・は?」
「良いわね~その反応。200年ぶりだわ」
「ちょっと待て、今の話はなんだ? 説明しろ!!」
「いいわよ~簡単に言えば、貴方は私への貢物って事よ」
そう恍惚とした表情で言う。
私達のクラスの悪魔になると生身で外に出られないのよ。召喚されれば別だけど、私達のクラスを呼び出せる人間なんてほとんど居ないでしょ? だから人の肉体を奪って外に出るしかないの。そこでこの本よ、わざわざ人間襲うのって面倒でしょ? だから“悪魔の知識と力が手に入る本がある”なんて噂を流したら馬鹿みたいに貢物が寄ってきたわ。
そしてアスモデウスは悪魔の中でも人間に協力的だ。なんて噂も流れてるでしょう? アレは私がわざわざ前例を作ったからよ。
「すべて計画通りと言う訳か?」
「そゆこと~」
マコトは瞬時に全身に魔力を巡らせる。
冗談じゃない!!
「あら? まさか私と戦おうなんて思っているかしら?」
「本心では戦いたくないのですが・・・・逃がしてはくれんのだろう?」
「ええ。そんな事させる訳ないじゃない」
そう告げた直後、マコトの全方向に魔法陣が出現する。
「・・・・っ!!」
嘗めんな!!
「プラグテ・ビギナル。サギタ・マギカウナ・ルークス(魔法の射手光の一矢)」
マコトは目の前にある魔法陣に手を突っ込み、魔法の射手を撃つ。
マコトの手から放たれた巨大な光のバリスタの矢は見事、目の前の魔法陣を打ち破り、女性に向かって真っ直ぐに飛んでいく。
「あら? 随分と大きいサギタ・マギカ(魔法の射手)ねぇ」
そう言うと悪魔は手を翳す。するとまた別の魔法陣が展開され、そこからマコトのサギタ・マギカ(魔法の射手)など容易に飲む込む一条の光が発現し、マコトの横を悠然と通り過ぎる。
「・・・・っ!?」
勝てない・・・・此処で死ぬのか俺は・・・・。
冗談じゃない!! 足掻いてやる! この命燃え尽きるまで足掻いてやる!!
「サヤっ!!」
瞬時に、マコトの髪色と瞳の色が変わる。
そして回れ右! なんの迷いもなく逃走。
「なんとかして逃げねぇと!」
今もてる全ての力を出し切って走る。これぞ本当の全力疾走。
「アンタ本当に変わった魔法ばかり使うのね」
マコトの全力疾走など事ともせず、悪魔の女性は笑顔でマコト目の前に現れる。
「くっ!? プラグテ・ビギナル」
マコトは詠唱と同時に右手を悪魔の女性に向けて翳す。
が、次の瞬間にはマコトの右腕が宙を舞う。
「がぁああああああああ!!!」
何も無い白い空間でマコトの絶叫が木霊する。
マコトは傷口を見ると肘から上が綺麗さっぱりなくなっていた。
くそがああああ! やりやがったこの悪魔あああああ。
「普通なら操影術との融合なんてありえないのになんでアンタは出来るの?」
マコトの取れた右腕をお手玉の様に弄び悪魔はそう訊ねる。
「ハッ、知るかバーカ」
マコトは足に力を入れ、飛び上がろうとした。だが、いつまで経っても床に膝を着いたままだった。
「あ・・・・れ?」
下に視線を送れば大そうな血溜まりの上に自分の足が転がっていた。
「・・・・くそが」
「安心して、私が貴方に入ったら腕も足も元通りにするから。こんな面白い身体滅多にないものね、大事に使ってあげるわ」
艶かしい声と共に悪魔女の腕がマコトの身体に溶ける様に入って行く。
瞬間、悪魔女の首を掴む細い腕がマコトの身体から伸びた。
「ぐっ!? 何の真似!?」
「サヤ・・・・」
それはマコトから融合を解いたサヤだった。
サヤは悪魔女の首を掴んだままマコトから離れる。だが、サヤの体には悪魔女の腕が溶け込んだままだった。
「サヤ! お前何をしようとしている!」
「何故だ! 何故私は操影術などと魂の契約を続けている!! っ!? そうか!! そう言う事か!」
サヤを悪魔女からこの空間を埋め尽くす程の光が放たれる。
光の中で初めてサヤと融合した時見えた綺麗な女性がマコトの頭をクシャとすこし乱暴に撫でると――――
“大丈夫、マコトはお姉ちゃんが守るから”
――――と優しい声でそう言い、光の中に消えて行った。
光が収束するとそこには黒色のスーツを着込んだあの悪魔女が苛立ち気に立っていた。
「チッ! まさか亡霊の魂と契約しちまうとは私もやきが回ったもんだねぇ」
「・・・・ハハ・・・・なんだこの喪失感・・・・」
身体からなにか大切な物を無くした感じ・・・・。
悪魔女は頭を掻きながら、マコトの前まで立つと手を翳す。すると一枚の魔法陣が現れ、暖かい光がマコトを包んだ。
「治癒魔法・・・・なんで?」
「ハンッ、身体を貰った以上契約者の願いはキッチリ叶えるのが私達悪魔の流儀だ。その辺を人間なんかと一緒にするな」
「そうか・・・・姉貴はなんだって?」
「アンタを守れだって。」
「・・・・プラグテ・ビギナルサギタ・マギカウナ・ルークス(魔法の射手光の一矢)」
マコトはそう唱え、繋がった右手を翳す。
だが、その右手から何も発現しなかった・・・・。
「ハハハ、・・・・やっぱりか。あの巨大な光の一矢も操影術も姉貴の恩恵があったからか」
薄々は気付いていた。この喪失感は姉を失っただけのものじゃいことを。
「今更気付いたの? アンタは魔力を持っててもなんの魔法も発現できないただの奇形児。全ては先に産まれる筈だった姉の力があったからこそね。でも、今のアンタは違う。今のアンタは姉以上の魔法使いになったのよ」
「え?」
「今や私はアンタの影になったのよ。当然その主である貴方に私が使うあの力を使う事ができるわ。まぁ、その前に魔法陣についてミッチリ叩きこんであげるわ! さぁ! いくわよ!!」
悪魔女はマコトの手を握るとぐいぐいと引っ張っていく。
これから始まるのはめくるめく魔法陣の授業。別荘の夜は長い。
何処か見覚えのある風景、空には妖しく光る月がマコトを見下ろしてした。
隣接するビルの屋上から気配を感じ、そちらに視線を向けると少女と青年の姿があった。
「やれやれ、精神攻撃ってか・・・・」
マコトは溜息混じりにそう呟いた。
「・・・・こんばんわ」
突然、マコトの隣に現れた男。それはどこからどう見ても、紛れも無く、“マコト”だった。
「こいつは驚いた、目の前に俺がいるわ」
「よう、俺。元気か?」
「ああ、おかげ様でな」
瞬間、遠くから轟音と砂煙が上がる。
青年と少女がぶつかり合っていた。
「結局、戦う事になっちゃったんだよな~」
「ああ、そうだな」
二人のマコトは過去の自分の姿を目で追いながら語り合う。
「彼女だけの味方になる覚悟は無いけれど彼女を助けたいと思っている。彼女のを救うにはそれしかないというのに。本当に馬鹿だな」
「ああ、そうだな」
「ほら見ろよ、結局は彼女を殺してしまっただけというお粗末な結果じゃん。親父がやろうとした事を代わりにやっただけじゃん、なんだかんだと言ってたくせに」
「ああ、そうだな」
「覚悟を決めたとかなんとか言っておいて、学校に帰ってきた途端、自責の念に囚われて勝手に心を閉ざして。覚悟なんてまったく出来てなかったんじゃないか」
「ああ、そうだな」
瞬間、多くを語っていたマコトがもう一方のマコトに掴み掛かる。
「さっきからなんだお前! いい加減な返事ばかりしやがって!」
「・・・・はぁ。だったら何て言ったら良いんだ?“違う!”って、お前に掴み掛かればよかったのか? そして俺は俺自身を殴るのか? そんな精神的にも肉体的にも痛いことしてどうなるんだよ。此処で否定して何か変わるのか? 俺はさ、今めっちゃワクワクしてるんだ、そりゃもうドラ○ンボールの主人公並みにな!」
「え?」
「アスモデウスの知識と力、マスターの別荘の機能、そしてなによりも今年魔帆良の世界樹に起こる最大イベントを組み合わせたら最高の公式ができあがるだろうが!!」
そう言うと目の前の等身大のマコトは幼少の頃の姿となっていた。
小さなマコトは肩を震わせ、涙を拭いながら言う。
「そんなことしたら皆に嫌われちゃうよ・・・・」
「俺一人嫌われても何の問題もないさ・・・・と、自己陶酔してみる」
「・・・・あの子の為?」
気にせず続ける幼少のマコト。
「いや、違うな・・・・」
俺は彼女の為になる事は何も出来なかった。ただ殺して、彼女の夢をぶっ壊しただけの悪党。だから今俺の頭の中にある計画は彼女の為でも無く、世界で苦しんでいる子供達の為でもない。
「ただ、自己陶酔しきった馬鹿が無謀にも世界を混乱の渦に巻き込もうと考えただけの計画だ」
小さなマコトは消え入りそうな声で“それでいいんだね”と口にした。
「ああ。おら、いつまでも泣いてないで行くぞ」
すっと小さなマコトに手を差し伸べるマコト。
「なに不思議そうな顔してんだよ、弱くて臆病で泣き虫のお前も入れて俺だろうが。やってやろうぜ?」
小さなマコトがマコトの手を取ると、小さなマコトは光となって消えていく。
「うっし! いっちょやってみるか!!」
青年は片腕をグルグルと回しながらその場を後にする。
その後姿を少女二人は遠目に見ていたのだった。
「・・・・もう。泣くの止めや」
木乃香は消え入りそうな声でそう言う。
「・・・・はい」
「いつまでも泣いてたらマコっちゃんはどんどん先に行ってしまう」
先ほどまで俯き気味だった顔を上げ、木乃香は強く拳を握る。
「いまはウチの出来ることでマコっちゃんをサポートしていくだけや」
涙を拭い、再び立ち上がる少女の表情は僅かに大人び、凛としていた。
「フッ、そうですね! マコト様はいつもドンドン先に行かれますから私達も必死に追いかけないといけませんね?」
「うん。あの愚か者の唇を奪いにいくぞ~!!」
「ええええ!? まさかお嬢様!?」
「さぁ、いくで~」
と、意気揚々と駆け出す木乃香。
「おお、お嬢様!? 本気ですか!?」
「ん? 当たり前やろ~。あっ、せっちゃんから先にする?」
「ええええ!!!」
※ ※ ※
「よく取り戻したわね、心の欠片を。拒絶する人が多いのに・・・・」
「因みに拒絶したらどうなるんだ?」
“自分の心を拒絶した者がどうなるかなんて簡単に想像できるでしょ”
た、確かに・・・・。
「さぁ、契約といきましょう。」
「おう、頼む。」
すると、女性は何か思い出した様にポンと手を叩くと。
「そうそう言い忘れてたけど。私のクラスになると契約は魂の契約と言って、簡単に言えば私が貴方の魂と融合するって事なんだけど・・・・」
そこまで言い、女性は瞳を細め、口元を歪め――――
“大抵、私の魂が強すぎて貴方の魂を塗り潰しちゃうわ”
――――と、なんとも嬉しそうに言った。
「・・・・は?」
「良いわね~その反応。200年ぶりだわ」
「ちょっと待て、今の話はなんだ? 説明しろ!!」
「いいわよ~簡単に言えば、貴方は私への貢物って事よ」
そう恍惚とした表情で言う。
私達のクラスの悪魔になると生身で外に出られないのよ。召喚されれば別だけど、私達のクラスを呼び出せる人間なんてほとんど居ないでしょ? だから人の肉体を奪って外に出るしかないの。そこでこの本よ、わざわざ人間襲うのって面倒でしょ? だから“悪魔の知識と力が手に入る本がある”なんて噂を流したら馬鹿みたいに貢物が寄ってきたわ。
そしてアスモデウスは悪魔の中でも人間に協力的だ。なんて噂も流れてるでしょう? アレは私がわざわざ前例を作ったからよ。
「すべて計画通りと言う訳か?」
「そゆこと~」
マコトは瞬時に全身に魔力を巡らせる。
冗談じゃない!!
「あら? まさか私と戦おうなんて思っているかしら?」
「本心では戦いたくないのですが・・・・逃がしてはくれんのだろう?」
「ええ。そんな事させる訳ないじゃない」
そう告げた直後、マコトの全方向に魔法陣が出現する。
「・・・・っ!!」
嘗めんな!!
「プラグテ・ビギナル。サギタ・マギカウナ・ルークス(魔法の射手光の一矢)」
マコトは目の前にある魔法陣に手を突っ込み、魔法の射手を撃つ。
マコトの手から放たれた巨大な光のバリスタの矢は見事、目の前の魔法陣を打ち破り、女性に向かって真っ直ぐに飛んでいく。
「あら? 随分と大きいサギタ・マギカ(魔法の射手)ねぇ」
そう言うと悪魔は手を翳す。するとまた別の魔法陣が展開され、そこからマコトのサギタ・マギカ(魔法の射手)など容易に飲む込む一条の光が発現し、マコトの横を悠然と通り過ぎる。
「・・・・っ!?」
勝てない・・・・此処で死ぬのか俺は・・・・。
冗談じゃない!! 足掻いてやる! この命燃え尽きるまで足掻いてやる!!
「サヤっ!!」
瞬時に、マコトの髪色と瞳の色が変わる。
そして回れ右! なんの迷いもなく逃走。
「なんとかして逃げねぇと!」
今もてる全ての力を出し切って走る。これぞ本当の全力疾走。
「アンタ本当に変わった魔法ばかり使うのね」
マコトの全力疾走など事ともせず、悪魔の女性は笑顔でマコト目の前に現れる。
「くっ!? プラグテ・ビギナル」
マコトは詠唱と同時に右手を悪魔の女性に向けて翳す。
が、次の瞬間にはマコトの右腕が宙を舞う。
「がぁああああああああ!!!」
何も無い白い空間でマコトの絶叫が木霊する。
マコトは傷口を見ると肘から上が綺麗さっぱりなくなっていた。
くそがああああ! やりやがったこの悪魔あああああ。
「普通なら操影術との融合なんてありえないのになんでアンタは出来るの?」
マコトの取れた右腕をお手玉の様に弄び悪魔はそう訊ねる。
「ハッ、知るかバーカ」
マコトは足に力を入れ、飛び上がろうとした。だが、いつまで経っても床に膝を着いたままだった。
「あ・・・・れ?」
下に視線を送れば大そうな血溜まりの上に自分の足が転がっていた。
「・・・・くそが」
「安心して、私が貴方に入ったら腕も足も元通りにするから。こんな面白い身体滅多にないものね、大事に使ってあげるわ」
艶かしい声と共に悪魔女の腕がマコトの身体に溶ける様に入って行く。
瞬間、悪魔女の首を掴む細い腕がマコトの身体から伸びた。
「ぐっ!? 何の真似!?」
「サヤ・・・・」
それはマコトから融合を解いたサヤだった。
サヤは悪魔女の首を掴んだままマコトから離れる。だが、サヤの体には悪魔女の腕が溶け込んだままだった。
「サヤ! お前何をしようとしている!」
「何故だ! 何故私は操影術などと魂の契約を続けている!! っ!? そうか!! そう言う事か!」
サヤを悪魔女からこの空間を埋め尽くす程の光が放たれる。
光の中で初めてサヤと融合した時見えた綺麗な女性がマコトの頭をクシャとすこし乱暴に撫でると――――
“大丈夫、マコトはお姉ちゃんが守るから”
――――と優しい声でそう言い、光の中に消えて行った。
光が収束するとそこには黒色のスーツを着込んだあの悪魔女が苛立ち気に立っていた。
「チッ! まさか亡霊の魂と契約しちまうとは私もやきが回ったもんだねぇ」
「・・・・ハハ・・・・なんだこの喪失感・・・・」
身体からなにか大切な物を無くした感じ・・・・。
悪魔女は頭を掻きながら、マコトの前まで立つと手を翳す。すると一枚の魔法陣が現れ、暖かい光がマコトを包んだ。
「治癒魔法・・・・なんで?」
「ハンッ、身体を貰った以上契約者の願いはキッチリ叶えるのが私達悪魔の流儀だ。その辺を人間なんかと一緒にするな」
「そうか・・・・姉貴はなんだって?」
「アンタを守れだって。」
「・・・・プラグテ・ビギナルサギタ・マギカウナ・ルークス(魔法の射手光の一矢)」
マコトはそう唱え、繋がった右手を翳す。
だが、その右手から何も発現しなかった・・・・。
「ハハハ、・・・・やっぱりか。あの巨大な光の一矢も操影術も姉貴の恩恵があったからか」
薄々は気付いていた。この喪失感は姉を失っただけのものじゃいことを。
「今更気付いたの? アンタは魔力を持っててもなんの魔法も発現できないただの奇形児。全ては先に産まれる筈だった姉の力があったからこそね。でも、今のアンタは違う。今のアンタは姉以上の魔法使いになったのよ」
「え?」
「今や私はアンタの影になったのよ。当然その主である貴方に私が使うあの力を使う事ができるわ。まぁ、その前に魔法陣についてミッチリ叩きこんであげるわ! さぁ! いくわよ!!」
悪魔女はマコトの手を握るとぐいぐいと引っ張っていく。
これから始まるのはめくるめく魔法陣の授業。別荘の夜は長い。
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