お尻を出した子一等賞。
只今、ネギま書き直し中~♪ ネタバレにご注意を。
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真・その名はマコト(メインディッシュパート10)
こっちの作業は完了しましたよ、ガンドルフィーニ先生」
(ご苦労、以後は周辺を警戒しつつ戻ってくれたまえ)
「へいへいー」
監禁されたのは僅か19時間足らずで、そこからは仕事に借り出されて・・・・。
(ご苦労、以後は周辺を警戒しつつ戻ってくれたまえ)
「へいへいー」
監禁されたのは僅か19時間足らずで、そこからは仕事に借り出されて・・・・。
「 一日も経たない内に解放とか・・・・関東魔法教会も相当切羽詰まってるらしい。
ソレに対しウチの関西呪術教会は今回の件については寛容で日本を始め、他の諸国が魔法を信じ、力を求めた時に幅を利かせようと動いてる。
「流石は爺婆共だ考え方が違う、詠春様も大変だ」
「ん? お父様がどうかしたん?」
「おわっ!? ばばばばかっ! なに普通に出てきてんだよ!」
「大丈夫や~マコっちゃん、あれからもう4日。影で先生達を見てきたけどなーみーんなウチ達どころじゃないみたいやしなー」
実際その通り、既に関東魔法協会はこの地からの撤退が決まり。撤退準備に忙しく、主だった魔法先生には既に通知が出されている事から行方不明になってる生徒については後回しにされている状況だった。
「・・・・世界樹の魔力は今日が限界だ」
マコトが少し俯きながらそう言うと木乃香は小さく“うん”と頷いた。
「もし、ネギ君達が今日来んだらウチ達はどうなるんかな?」
木乃香は苦笑いを浮かべつつ頬を人差し指で掻きながらそうマコトに訊ねる。
「・・・・俺達は本山に戻る事になる。お前は呪術協会の長を務める近衛家の次期長。俺は呪術協会実行部隊を取り纏める徳川家の長。刹那はウチの部隊員。わかってるだろ? 俺もお前も刹那も抗えない宿命がある事、此処に通っている一般生徒とは違う事」
「うん、ただな。このまま何もせんと皆と別れないかんのは寂しいなぁって」
そう呟いた木乃香の表情はとても儚く、弱弱しく、頬を一筋の涙が零れていった。
「アホ! まだそうと決まったわけじゃねーだろ? だからそんな顔すんなバカ」
マコトは木乃香の頭を一度ペシっと叩いた後、少し乱暴になでた。
「・・・・うん!」
木乃香は涙を拭ったあと力強く頷いた。
(報告します!!)
突然、刹那からの魔法陣通信が展開される。
「おぃいいいいいい! 念話と魔法は禁止しただろう! いくら監視が甘いからって」
(それどころではありません!)
「ええええ・・・・」
先生助けて!! 忠誠心が息してないの!!
(ネギ先生を発見しましたが、先にガンドルフィーニ先生に接触されてしまい連れていかれてしまいました! どうしますかマコト様)
「・・・・っ! キタキタ!!! きたぞーーーーー!!」
マコトが興奮するなか、念話が入る。
(本部から各員、ネギ先生を確保した。他の行方がわからなかった生徒も確認したエヴァンジェリン邸へ移動している。近くの先生、生徒は確保に向かってほしい。それから徳川マコトは今すぐ出頭する事)
(へーい)
「俺はこれから地下牢に出頭しないといけないから、木乃香は刹那と合流してアスナ姐さん達を地下牢まで誘導してくれ。ただし、木乃香は俺のアーティファクトの使用禁止な、刹那も出来るだけ使用を控えてくれ」
刹那は了解してくれたが、木乃香はむくれてブーイングを飛ばしてくる。
「そんな顔してもダメダメ。むこう着くまではお姫様を演じてちょーだい」
「ぶー。ところでアスナ達と合流する必要あるん? ウチ達に必要なんはカシオペアだけやろ?」
それを聞いてマコトは大きく溜め息をつくと肩を竦める。
「やれやれ、木乃香さんはまるでわかってませんなー。ネギ先生とアスナ姐さん達には超 鈴音を相手してもらうのだよ」
(その間に我々が動き、事を成すんですよね?)
「その通りっす刹那さん。だから頼むぞ木乃香、刹那」
(はい!)
「わかったわ」
木乃香は刹那と念話しつつ転移魔法を使い姿を消した。
※ ※ ※
マコトが地下牢に着くと同時に中からガンドルフィーニ先生と瀬流彦先生が出てくる。
その表情は露骨に落胆と苛立ちの色が窺える。
「随分と不機嫌そうですね先生? 召喚に従い参上致しましたが?」
そう言うマコトの表情は挑発的な厭らしい笑み。
それを見てガンドルフィーニ先生は忌々しげにマコトを睥睨する。
「君には後ほどもう一度話を聞く、それまで此処で待機だ!!」
声を荒げてそう言うとガンドルフィーニ先生は少しずれた眼鏡を直し、足早に去っていった。
「ダメだよマコト君、あんな言い方したら、ガンドルフィーニ先生も色々あるんだから」
そんな声が聞こえ、視線を向けると弐集院先生がそこにいた。
よく見れば隠れる様に弐集院先生の足にしがみ付いた先生の娘さんの姿もあった。
「いやははは、わかってはいるんですがね~ネギ先生と俺の話を信じて協力してくれたら嬉しかったんですけどね」
「はははは、仕方がないさ。僕達大人は中途半端に君達子供よりも長生きしてるからね経験上、固定観念に捕らわれやすい」
「そしていくら真実を語ろうと俺達は先生方から見ればガキだからな。それこそガキの戯言だしな~」
「はははは、流石は徳川家現家長だね。」
マコトはおどけて“いや~”と言いつつ頭を掻いた。
「・・・・でも君は先生方が信じてくれなくても良いんだろ? そんな事なんて関係なく君は動くのだろう?」
そう言う弐集院は先程纏っていた柔らかな空気など一瞬で消え去り、普段の糸目は半眼まで開かれ、纏う空気は重く、威圧してくる。
「止めますか弐集院先生?」
マコトはパクティオーカードを手に取り、弐集院先生を見据える。
二人の間に流れる空気はどんどん重くなり、遂に空気が蜃気楼の様に揺らめき始める。
「はははは、僕一人じゃ荷が重そうだし止めとくよ。それに君みたいに若さに任せて突っ走る若者を見ているのは飽きないしね」
弐集院は破顔一笑し、マコトを肩をポンポンと叩いた。
「子供は夢に向かって一生懸命走れば良い。責任は我々大人が取るよ」
そう言い、マコトの肩に手を乗せたまま弐集院は微笑んだ。その笑顔は柔らかくもあり、精悍で頼りがいのある顔だった。
「ありがとうございます弐集院先生・・・・」
頭を下げ、感謝の言葉を口にするマコト。その時、弐集院先生の携帯が鳴り響く。
「はい。え? ははは、わかりました」
機械的な音共に携帯を閉じるとマコトに視線を向ける。
「どうやら、彼女達を捕らえるのを失敗したようだね。しかも此処に向かってきてるらしいよ」
“君の計画のウチかい?”と小さく聞いてくる弐集院に対してマコトは肩を竦めて“まさか”と答える。
「って、あれ? 娘さん走って行っちゃいましたよ?」
「ええっ!? ああっ! コラコラ」
「まぁまぁ、お父さんの役に立とうとしてるんじゃないですか。ここは俺に任せてください必ず無傷で連れ戻してきますよ」
※ ※ ※
刹那達は転移魔法でエヴァンジェリン邸の1階に現れる。
二階から人の気配を感じ取り、即座に二階へと上がる。
「皆さん、御無事でしたか!」
「刹那さん! 木乃香! 二人とも何処に居たのよ? 携帯も繋がらないし、心配してたんだから」
アスナを始めとする数人が刹那と木乃香に声を掛ける。
「私とお嬢様はマコト様と一緒に超鈴音の情報を少しでも集めようとしたのですが、失敗し、皆さんより先にこの時間に飛ばされてしまったのです」
「そうだったんだ。でもお互い無事でよかったね刹那さん」
アスナのその屈託のない笑顔に少し刹那の心はズキリと痛んだ。
もう、決めたんだ・・・・私は最後までマコト様とお嬢様と共に!
「それよりも時間がありません! 今は急いで此処を離れてください! もうすぐ魔法先生が・・・・っく!? どうやら遅かったみたいですね」
刹那のその言葉に皆は窓の外を見る、そこには二人の魔法先生が居た。
一人は髪が腰まである見目麗しい女性剣士。もう一人は黒地のスーツが似合う渋めの男だった。
「神楽坂明日菜以下9名そこにいるのはわかっています。おとなしく出てきて私達に同行してください! 危害を加えるつもりも、あなた方の不利益になるようなことをするつもりもありません。ただ、今回の事件の重要な参考人として事情を聞かせて欲しいだけです」
と、魔法先生の一人神鳴流剣士、葛葉刀子は刹那達に呼びかける。
「ここは私が時間を稼ぎます、皆さんは先にネギ先生と合流してください。ネギ先生は既にマコト様が助け出している筈です。場所と詳細についてはお嬢様から聞いてください」
そう言い終えると刹那は楓の方に視線を送ると楓は小さく頷いた。
「今は時間が無いから移動しながら説明するで」
木乃香を先頭にエヴァンジェリン邸を出ていく7名と一匹。
残った刹那と楓は簡単な作戦を伝えると外に出て行くのだった。
「出てきましたか・・・・他の皆さんは・・・・っ!? 刹那!! 皆さんを逃がしましたね!」
瞬間、渋い男性のオーラを放つ魔法先生がエヴァンジェリン邸を飛び越えようとするが、楓が行く手を阻む。
「申し訳ありません刀子さん、あなた方にはここでしばらく足止めをさせて頂きます」
「いい度胸です刹那!」
「皆ええか? アスナもおるから三行で説明するえ」
「どういう意味よそれ!?」
私達はカシオペアを使って、もう一度戻れるんや。
原動力の世界樹の魔力は根の方に行けばまだ健在や、せやけど今日が限界。
だからネギ君とマコっちゃんとちゃちゃっと合流して向こうに戻るだけや。
「なんだ、それだけなの? 楽勝じゃない!」
「本当に助かったぜ、一時はもうゲームオーバーかと思ったからな」
ケットシーのカモが木乃香の肩に乗り、そう言うと木乃香は小さく“うん”と返す。だがその表情は少し曇っていた。
「みんなこっちや!!」
自分の中から湧き上がってくる罪悪感を振り切るように木乃香は駆け、ついに終着点である教会に辿り着く。
木乃香を含むはネギパーティは偶々そこに居たガンドルフィーニ先生と瀬流彦先生を見事に気絶させると地下へと続く長い長い階段を降り始めた。
あまりにも長く、皆口々に愚痴を零しつつも無事に最下層に辿り着く。
「ふぅ・・・ふぅ・・・ネギ君はこの通路の先や~」
「よーし、皆いくよー!」
アスナはアーティファクトであるハリセンを片手に皆の先頭に立ち、通路に足を踏み入れた瞬間、アスナは木の葉の様に宙を舞い壁に叩きつけられる。
「アスナさん!?」
アスナを吹き飛ばした物体が暗がりからその姿を現す。
それは三頭一身のケルベロスを彷彿とさせる姿をしていた。
突然の敵襲に狼狽する生徒達。通路の奥に佇む影にも気づかずに。
「すげーなこりゃ」
マコトは幻覚に翻弄される少女達を見ていた。
まだ初等部低学年なのにこんなにも立派な幻覚魔法を扱えるとは、おっそろしいな弐集院先生の娘は。
巨大な体躯をもったケルベロスもグリフォンも本当は居ない。彼女達にとっての恩師も居ない。本当に彼女達の前に居るのは少女とヌイグルミだけだ。
アスナ達は少女とマコトの前で意味もなく踊り始める。ある者は勇壮に踊り、ある者は悲痛な声を上げながら地べたに転がる。
木乃香も幻覚に魅せられているが、古部長が守っていてくれるから安心だろう。
「ん? あの娘・・・・」
そんな中、一際小柄でオデコが特徴的な少女が自らのアーティファクトである分厚い本を開く。
「あの本、かなりすげぇな。あんな恐ろしい物年端も行かない少女が読んでいい物なのか」
少女が使う本を凝視する。
(マコト気付いてる? その本を読んでる娘を基点に流れが変わったわね)
「え? うそ!?」
見れば小柄な少女がアスナに助言したらしく、逃げ腰だったアスナの動きが明確な意思を持ったものに変わっていた。
そして――――少女の一言の呪文によって幻覚はガラスの様に砕け散っていく。
「全て、幻覚です。あなたが犯人ですねおチビさん」
さっきまで本を読んでいた小柄な少女が明確にそう告げる。
「え? じゃあ何? さっきの全部嘘? 高畑先生があんな怖い顔してたのも全部夢・・・? ふ、うふふふふ・・・・」
アスナはそう呟くと幽鬼の様に犯人である少女に近づくと――――
「こぉのチビーバカガキーッフラれたばっかの憧れの人と戦わせるなんてどーゆー神経してんのよッ、乙女の心を弄んでーッぶぶ、ぶん殴るくらいじゃすまないわよーっ!!」
――――ぶち切れた。
ぱち・・・ぱち・・・ぱち・・・。
「えっ」
突然響く拍手に呆けた声をあげるアスナ。視線の先にはマコトが立っていた。
「いや~お見事、お見事」
マコトはそう言いつつ狼狽している少女を守る様にアスナの前に出る。
「まぁ、そんなに怒らないでくださいよ。この娘も困っている父親の為に何かしてあげたくて必死だったんですから」
少女はマコトの足にしがみ付いて小さくゴメンなさいと素直に謝罪する。
「・・・・えーと、その私も怒鳴ったりしてごめんね」
「さぁ、先にパパのところにお帰り」
マコトがそう言うと少女は半べそ掻きながらも頷くと戻っていった。
「さて、皆さん此処まで来たという事は退屈で平穏な日常を捨てる覚悟はあると思っていいんですね?」
マコトはぐるっと彼女達の顔を見渡す。
「ネギ先生は魔法界にとって特別なんです。彼がサウザントマスターの実子である以上、周りの大人達は彼を放っておかない。彼に関り続ければ確実に皆さんにも実害が生じる可能性が出てくる事ぐらいわかってますね?」
・・・・先程の一戦が彼女達を成長させたか、眼鏡ネコミミセーラー少女以外は皆良い目してる。
「はぁ~。退屈で平穏な日常という貴重な物を捨ててまでこっちのイカレタ日常に足を踏み入れるなんて俺には理解できんな」
マコトは溜息を一つ吐くとそう零した。
「んじゃ、このまま進んでくれ。ネギ先生と待ってるからよ」
そう告げ、マコトは魔法陣を発動させて姿を消した
マコトはネギが幽閉されている牢の前に姿を現すとその扉を開ける。
この魔法使い専用の牢もコンピューター制御でロックするというなんともファンタジックな世界が 色々と台無しだが、ちゃっちゃっとロックを解除して、下から上に扉を持ち上げる!!
その刹那、
「わぁあああああ!!! 開け!!」
その気合の入った掛け声と共に少年の拳がマコトの顎を寸分違わず捉える!!
ああっと! マコト君ふっとばされたーーーーー!!!
「オウフ」
「ああっ!? ごごごごごめんなさいマコトさん!! 大丈夫ですか!? どどどどどうしよう!?」
「ハハハせっかく助けに来たのに、偶然を装い俺の命を狙ってくるとは・・・・」
マコトは口許から垂れている血を拭き取るとそう言いつつ立ち上がった。
その足はジョーを打たれた所為か産まれたての小鹿の様に覚束なかった。
「そ、そんな・・・・僕、そんな事しませんよ~!!」
「飽くまで白を切る気か、偶然で寸分違わずジョーを打ってくる奴がこの世界に居るか!!」
「ぐ、偶然です!!」
「ほう、偶然だと? ロックを解除した時にガコンっていう大きな音がしたと思うんだがな? それにも気づかなかったと?」
「・・・・あ、あああの時は、そ、そそその、必死で」
腕を組んでいるマコトの横で必死で弁解する少年の後から大きな声で一言言葉が木霊する。
「ネギ!」
アスナを中心とするネギパーティ(女子達)が突っ込んでくる。
「ガハッ」
マコト君ふっとばされたーっ!
・・・・俺の扱い酷くねぇ? ネギ助けたの俺だよ? 皆をスムーズに此処まで導いたのも俺だよ? そんな俺を吹き飛ばしてさ、皆で盛り上がってさ、しかもさ、幼馴染の木乃香まで俺の事忘れてさ、向こうで盛り上がっちゃってさ・・・・もう、さっさと行こう。
「さて、お嬢様方。感動の再開はそこまでにして頂いて、時間がありませんのでさっさといきますよ? ネギ先生は今の状況をそこのオコジョから聞いてくれ」
ネギパーティ数人からの厳しい視線を無視しつつ、マコトは二枚の大きな魔法陣を展開する。
「はい、ネギ先生コレ」
マコトはネギに杖と指輪とパクティオーカードを渡す。
「あ、ありがとうございますマコトさん。あの、この魔法陣はなんですか?」
「ああ、これは・・・・」
マコトが説明しようとした時、片方の魔法陣から刹那と楓が現れる。
「単なる転移魔法ですよ、二人とも足止めご苦労」
「いえ、お役に立てたようで。あ、ネギ先生もご無事で」
「はいっ! マコトさんや皆さんのおかげです」
「せっちゃん、おかえり」
刹那と楓を労うネギパーティ。
「これが転移魔でござるか~やはり便利でござるな~」
だが、楓だけが空気を読まずに、自分の足元の魔法陣を突っ突いていた。
「よーし、世界樹最深部まで一気に飛ぶからそっちの魔法陣に乗れ」
ワラワラと魔法陣の上に移動する。
「なにやってる楓! 早く来い! 置いてくぞ」
「おおっ、すまんすまん」
そして、マコトが指を鳴らすと同時に魔法陣は発動し、淡い光と共に周りの景色が一変する。
「うぉっ、なんだコレ」
「なんで巨大遺跡が学園の地下にあるんだ!?」
「そんな事より、ネギ先生カシオペアはどうですか?」
そう言われ、ネギはカシオペアに目を向けると止まっていたカシオペアの針が規則正しく時を刻んでいた。
「はい、大丈夫です。」
「あとはネギ先生次第です、カシオペアを使うのも使わないのも」
「ちょっと、マコトさん! 此処まで来てなに言い出すのよ?」
静かなこの空間にアスナの声が響く。
「アスナさん達もネギ先生と戻る事を選んだ様にネギ先生にも選ぶ権利があると思いますが?」
それを聞いてアスナは俯き、言葉を失う。
「アスナさん、マコトさんありがとうございます。みんな掴まってください、いきます!!」
ネギはカシオペアを暫く見つめた後、力強い声でそう口にした。
そして、ガラッと景色が変わるとそこはお空の上だった・・・・。
「うわぁあああああ!! な、なんで空の上なの――――っ!!」
「知るか――――っ!!」
ネギの魔力ががっつり減ったな・・・・。
「落ち着け、転移魔法を奢ってやろう。」
マコトが指を鳴らすとまた景色がガラッと変わり、とあるテラスの上に降り立つ。目の前にはパレードが行われていた。
「おおおおおお」
「た、助かった―っ」
「マコトさんのそれ本当便利ね」
「ハハハ、それよりもどうやら成功したみたいだな。パレードがやってるぞ」
「ほ、本当だっー!!」
皆がタイムスリップの成功に盛り上がっている中、長谷川は急いでパソコンの電源を入れ、日時を確認する。
「間違いない、最終日だ、時刻は午前8時」
そして時間跳躍で自分の魔力を大幅に消費したネギが倒れた――――。
「とりあえず、ネギ先生は俺が運ぶからどこか休める場所ないか?」
俺たちは宮崎さんの提案で図書室にやってきた。
「ここなら学園際中誰も入ってこないと思いますー図書関係のイベントは総て図書館島ですし、どのサークルもここは使ってないですから。そ、それでネギ先生は・・・・」
「恐らく長距離の時間跳躍で魔力を使い果たしちまったんだ、大丈夫、半日も寝てれば回復するさ」
カモの声を聞きながらマコトはネギをソファーの上に降ろすと木乃香に視線を送る。
「木乃香頼む」
「・・・・うん」
木乃香は静かに頷くと、パクティオーカードを取り出す。
「アデアット(来たれ)!」
木乃香の声が図書室に響き、その身に漆黒のローブ付け、ゆっくりとネギに近づいていく。
「大丈夫やよ、ネギ君。これで一眠りしたら元気になれるからな~」
するとネギを中心に魔法陣が展開し、無数の光がネギの身体に次々と入っていく。
暖かい光に包まれ、ネギは安らかな寝息をたてる。
「魔力回復の魔法やよ、これで1時間もあれば全快できる筈や」
「すごーいっ、木乃香。いつの間にそんな凄い事できる様に・・・・木乃香?」
早乙女はいつもの調子で木乃香に触れようとした時、木乃香はその手から逃れる様にフワリと後方に飛び去る。
飛び去った先にはいつの間にかマコトと刹那が皆とは距離を取って並んで立っていた。
「アデアット(来たれ)!」
「・・・・アデアット(来たれ)」
そして刹那とマコトまたパクティオーカードを掲げ、使用する。
「え? ちょっと、三人でなにしてんの?」
アスナがそう訊くとマコトはゆっくりとローブの袖から仮面を取り出す。
「申し訳ないのですが、我々三人はここから別行動をとらせていただきます」
「え? 何言ってるのよ!! これから協力して超さん止めるんでしょ!?」
アスナはそう声を荒げる。その声を聞きながらマコトは手に持った君の悪い笑みを浮かべるピエロの仮面を付ける。
「協力はしました、アスナさん達を此処まで導いたでしょ? ネギ先生の魔力回復にも努めましたし、あとは皆さんが望む様に動けばよろしいかと考えますが?」
「マコトの兄貴、一つだけ教えてくれ。マコトの兄貴達は超側に付く気なのか?」
マコトとアスナの言葉で重苦しい空気が漂う中、ケットシーのカモがそう訊ねた。
「いや、それはない。俺達は俺達でやる事があるから此処に居るだけだ、寧ろ俺の計画上、超 鈴音とは敵対する事になる。同時にアスナさん達とも敵対するだろうな」
「つまり第三勢力か・・・・答えてくれてありがとよマコトの兄貴。互いの計画が上手くいくことを祈ってるぜ」
カモはそう口にし、机の上でサムズアップしてみせた。
「ああ」
「ちょっと待って! 木乃香、それに刹那さん。二人共わかってるの!? 私達戦う事になっちゃうかも知れないんだよ!!」
声を荒げるアスナに木乃香は一歩前に出て、アスナを見据える。
「アスナ、もう忘れたんか? さっき地下でマコっちゃんに訊かれたやろう?」
“退屈で平穏な日常を捨てる覚悟はあると思っていいんですね?”
「って、そしたら誰一人否定せんかったやろ? そして此処まで来た」
木乃香はそこで一度言葉切って、マコトと同じ仮面を付けた。
「此処はもう皆と笑って遊んで暮せる日常と違うんよアスナ? 此処は親友と力を持って対峙する非日常やよ? はよう自覚せんとウチ相手ならまだしも、マコっちゃんやせっちゃん相手だと怪我するえ」
「私達は既に覚悟を決めています。皆さんが私達の計画の障害となるなら容赦はしません・・・・」
そう言い、刹那も仮面を付けた。
「おいおい、楓と古部長以外酷いツラだな。」
一瞬でマコトに少女達の鋭い視線が集まる。
「ハハハ、そう睨むなよ。あ、そうだった一つ言い忘れてた。」
マコトは自分たちの下に転移魔法を展開させ、執事の様に仰々しく頭を下げる。
「ようこそ非日常へ」
そう言葉を残し、三人は光と共に姿を消した。
ソレに対しウチの関西呪術教会は今回の件については寛容で日本を始め、他の諸国が魔法を信じ、力を求めた時に幅を利かせようと動いてる。
「流石は爺婆共だ考え方が違う、詠春様も大変だ」
「ん? お父様がどうかしたん?」
「おわっ!? ばばばばかっ! なに普通に出てきてんだよ!」
「大丈夫や~マコっちゃん、あれからもう4日。影で先生達を見てきたけどなーみーんなウチ達どころじゃないみたいやしなー」
実際その通り、既に関東魔法協会はこの地からの撤退が決まり。撤退準備に忙しく、主だった魔法先生には既に通知が出されている事から行方不明になってる生徒については後回しにされている状況だった。
「・・・・世界樹の魔力は今日が限界だ」
マコトが少し俯きながらそう言うと木乃香は小さく“うん”と頷いた。
「もし、ネギ君達が今日来んだらウチ達はどうなるんかな?」
木乃香は苦笑いを浮かべつつ頬を人差し指で掻きながらそうマコトに訊ねる。
「・・・・俺達は本山に戻る事になる。お前は呪術協会の長を務める近衛家の次期長。俺は呪術協会実行部隊を取り纏める徳川家の長。刹那はウチの部隊員。わかってるだろ? 俺もお前も刹那も抗えない宿命がある事、此処に通っている一般生徒とは違う事」
「うん、ただな。このまま何もせんと皆と別れないかんのは寂しいなぁって」
そう呟いた木乃香の表情はとても儚く、弱弱しく、頬を一筋の涙が零れていった。
「アホ! まだそうと決まったわけじゃねーだろ? だからそんな顔すんなバカ」
マコトは木乃香の頭を一度ペシっと叩いた後、少し乱暴になでた。
「・・・・うん!」
木乃香は涙を拭ったあと力強く頷いた。
(報告します!!)
突然、刹那からの魔法陣通信が展開される。
「おぃいいいいいい! 念話と魔法は禁止しただろう! いくら監視が甘いからって」
(それどころではありません!)
「ええええ・・・・」
先生助けて!! 忠誠心が息してないの!!
(ネギ先生を発見しましたが、先にガンドルフィーニ先生に接触されてしまい連れていかれてしまいました! どうしますかマコト様)
「・・・・っ! キタキタ!!! きたぞーーーーー!!」
マコトが興奮するなか、念話が入る。
(本部から各員、ネギ先生を確保した。他の行方がわからなかった生徒も確認したエヴァンジェリン邸へ移動している。近くの先生、生徒は確保に向かってほしい。それから徳川マコトは今すぐ出頭する事)
(へーい)
「俺はこれから地下牢に出頭しないといけないから、木乃香は刹那と合流してアスナ姐さん達を地下牢まで誘導してくれ。ただし、木乃香は俺のアーティファクトの使用禁止な、刹那も出来るだけ使用を控えてくれ」
刹那は了解してくれたが、木乃香はむくれてブーイングを飛ばしてくる。
「そんな顔してもダメダメ。むこう着くまではお姫様を演じてちょーだい」
「ぶー。ところでアスナ達と合流する必要あるん? ウチ達に必要なんはカシオペアだけやろ?」
それを聞いてマコトは大きく溜め息をつくと肩を竦める。
「やれやれ、木乃香さんはまるでわかってませんなー。ネギ先生とアスナ姐さん達には超 鈴音を相手してもらうのだよ」
(その間に我々が動き、事を成すんですよね?)
「その通りっす刹那さん。だから頼むぞ木乃香、刹那」
(はい!)
「わかったわ」
木乃香は刹那と念話しつつ転移魔法を使い姿を消した。
※ ※ ※
マコトが地下牢に着くと同時に中からガンドルフィーニ先生と瀬流彦先生が出てくる。
その表情は露骨に落胆と苛立ちの色が窺える。
「随分と不機嫌そうですね先生? 召喚に従い参上致しましたが?」
そう言うマコトの表情は挑発的な厭らしい笑み。
それを見てガンドルフィーニ先生は忌々しげにマコトを睥睨する。
「君には後ほどもう一度話を聞く、それまで此処で待機だ!!」
声を荒げてそう言うとガンドルフィーニ先生は少しずれた眼鏡を直し、足早に去っていった。
「ダメだよマコト君、あんな言い方したら、ガンドルフィーニ先生も色々あるんだから」
そんな声が聞こえ、視線を向けると弐集院先生がそこにいた。
よく見れば隠れる様に弐集院先生の足にしがみ付いた先生の娘さんの姿もあった。
「いやははは、わかってはいるんですがね~ネギ先生と俺の話を信じて協力してくれたら嬉しかったんですけどね」
「はははは、仕方がないさ。僕達大人は中途半端に君達子供よりも長生きしてるからね経験上、固定観念に捕らわれやすい」
「そしていくら真実を語ろうと俺達は先生方から見ればガキだからな。それこそガキの戯言だしな~」
「はははは、流石は徳川家現家長だね。」
マコトはおどけて“いや~”と言いつつ頭を掻いた。
「・・・・でも君は先生方が信じてくれなくても良いんだろ? そんな事なんて関係なく君は動くのだろう?」
そう言う弐集院は先程纏っていた柔らかな空気など一瞬で消え去り、普段の糸目は半眼まで開かれ、纏う空気は重く、威圧してくる。
「止めますか弐集院先生?」
マコトはパクティオーカードを手に取り、弐集院先生を見据える。
二人の間に流れる空気はどんどん重くなり、遂に空気が蜃気楼の様に揺らめき始める。
「はははは、僕一人じゃ荷が重そうだし止めとくよ。それに君みたいに若さに任せて突っ走る若者を見ているのは飽きないしね」
弐集院は破顔一笑し、マコトを肩をポンポンと叩いた。
「子供は夢に向かって一生懸命走れば良い。責任は我々大人が取るよ」
そう言い、マコトの肩に手を乗せたまま弐集院は微笑んだ。その笑顔は柔らかくもあり、精悍で頼りがいのある顔だった。
「ありがとうございます弐集院先生・・・・」
頭を下げ、感謝の言葉を口にするマコト。その時、弐集院先生の携帯が鳴り響く。
「はい。え? ははは、わかりました」
機械的な音共に携帯を閉じるとマコトに視線を向ける。
「どうやら、彼女達を捕らえるのを失敗したようだね。しかも此処に向かってきてるらしいよ」
“君の計画のウチかい?”と小さく聞いてくる弐集院に対してマコトは肩を竦めて“まさか”と答える。
「って、あれ? 娘さん走って行っちゃいましたよ?」
「ええっ!? ああっ! コラコラ」
「まぁまぁ、お父さんの役に立とうとしてるんじゃないですか。ここは俺に任せてください必ず無傷で連れ戻してきますよ」
※ ※ ※
刹那達は転移魔法でエヴァンジェリン邸の1階に現れる。
二階から人の気配を感じ取り、即座に二階へと上がる。
「皆さん、御無事でしたか!」
「刹那さん! 木乃香! 二人とも何処に居たのよ? 携帯も繋がらないし、心配してたんだから」
アスナを始めとする数人が刹那と木乃香に声を掛ける。
「私とお嬢様はマコト様と一緒に超鈴音の情報を少しでも集めようとしたのですが、失敗し、皆さんより先にこの時間に飛ばされてしまったのです」
「そうだったんだ。でもお互い無事でよかったね刹那さん」
アスナのその屈託のない笑顔に少し刹那の心はズキリと痛んだ。
もう、決めたんだ・・・・私は最後までマコト様とお嬢様と共に!
「それよりも時間がありません! 今は急いで此処を離れてください! もうすぐ魔法先生が・・・・っく!? どうやら遅かったみたいですね」
刹那のその言葉に皆は窓の外を見る、そこには二人の魔法先生が居た。
一人は髪が腰まである見目麗しい女性剣士。もう一人は黒地のスーツが似合う渋めの男だった。
「神楽坂明日菜以下9名そこにいるのはわかっています。おとなしく出てきて私達に同行してください! 危害を加えるつもりも、あなた方の不利益になるようなことをするつもりもありません。ただ、今回の事件の重要な参考人として事情を聞かせて欲しいだけです」
と、魔法先生の一人神鳴流剣士、葛葉刀子は刹那達に呼びかける。
「ここは私が時間を稼ぎます、皆さんは先にネギ先生と合流してください。ネギ先生は既にマコト様が助け出している筈です。場所と詳細についてはお嬢様から聞いてください」
そう言い終えると刹那は楓の方に視線を送ると楓は小さく頷いた。
「今は時間が無いから移動しながら説明するで」
木乃香を先頭にエヴァンジェリン邸を出ていく7名と一匹。
残った刹那と楓は簡単な作戦を伝えると外に出て行くのだった。
「出てきましたか・・・・他の皆さんは・・・・っ!? 刹那!! 皆さんを逃がしましたね!」
瞬間、渋い男性のオーラを放つ魔法先生がエヴァンジェリン邸を飛び越えようとするが、楓が行く手を阻む。
「申し訳ありません刀子さん、あなた方にはここでしばらく足止めをさせて頂きます」
「いい度胸です刹那!」
「皆ええか? アスナもおるから三行で説明するえ」
「どういう意味よそれ!?」
私達はカシオペアを使って、もう一度戻れるんや。
原動力の世界樹の魔力は根の方に行けばまだ健在や、せやけど今日が限界。
だからネギ君とマコっちゃんとちゃちゃっと合流して向こうに戻るだけや。
「なんだ、それだけなの? 楽勝じゃない!」
「本当に助かったぜ、一時はもうゲームオーバーかと思ったからな」
ケットシーのカモが木乃香の肩に乗り、そう言うと木乃香は小さく“うん”と返す。だがその表情は少し曇っていた。
「みんなこっちや!!」
自分の中から湧き上がってくる罪悪感を振り切るように木乃香は駆け、ついに終着点である教会に辿り着く。
木乃香を含むはネギパーティは偶々そこに居たガンドルフィーニ先生と瀬流彦先生を見事に気絶させると地下へと続く長い長い階段を降り始めた。
あまりにも長く、皆口々に愚痴を零しつつも無事に最下層に辿り着く。
「ふぅ・・・ふぅ・・・ネギ君はこの通路の先や~」
「よーし、皆いくよー!」
アスナはアーティファクトであるハリセンを片手に皆の先頭に立ち、通路に足を踏み入れた瞬間、アスナは木の葉の様に宙を舞い壁に叩きつけられる。
「アスナさん!?」
アスナを吹き飛ばした物体が暗がりからその姿を現す。
それは三頭一身のケルベロスを彷彿とさせる姿をしていた。
突然の敵襲に狼狽する生徒達。通路の奥に佇む影にも気づかずに。
「すげーなこりゃ」
マコトは幻覚に翻弄される少女達を見ていた。
まだ初等部低学年なのにこんなにも立派な幻覚魔法を扱えるとは、おっそろしいな弐集院先生の娘は。
巨大な体躯をもったケルベロスもグリフォンも本当は居ない。彼女達にとっての恩師も居ない。本当に彼女達の前に居るのは少女とヌイグルミだけだ。
アスナ達は少女とマコトの前で意味もなく踊り始める。ある者は勇壮に踊り、ある者は悲痛な声を上げながら地べたに転がる。
木乃香も幻覚に魅せられているが、古部長が守っていてくれるから安心だろう。
「ん? あの娘・・・・」
そんな中、一際小柄でオデコが特徴的な少女が自らのアーティファクトである分厚い本を開く。
「あの本、かなりすげぇな。あんな恐ろしい物年端も行かない少女が読んでいい物なのか」
少女が使う本を凝視する。
(マコト気付いてる? その本を読んでる娘を基点に流れが変わったわね)
「え? うそ!?」
見れば小柄な少女がアスナに助言したらしく、逃げ腰だったアスナの動きが明確な意思を持ったものに変わっていた。
そして――――少女の一言の呪文によって幻覚はガラスの様に砕け散っていく。
「全て、幻覚です。あなたが犯人ですねおチビさん」
さっきまで本を読んでいた小柄な少女が明確にそう告げる。
「え? じゃあ何? さっきの全部嘘? 高畑先生があんな怖い顔してたのも全部夢・・・? ふ、うふふふふ・・・・」
アスナはそう呟くと幽鬼の様に犯人である少女に近づくと――――
「こぉのチビーバカガキーッフラれたばっかの憧れの人と戦わせるなんてどーゆー神経してんのよッ、乙女の心を弄んでーッぶぶ、ぶん殴るくらいじゃすまないわよーっ!!」
――――ぶち切れた。
ぱち・・・ぱち・・・ぱち・・・。
「えっ」
突然響く拍手に呆けた声をあげるアスナ。視線の先にはマコトが立っていた。
「いや~お見事、お見事」
マコトはそう言いつつ狼狽している少女を守る様にアスナの前に出る。
「まぁ、そんなに怒らないでくださいよ。この娘も困っている父親の為に何かしてあげたくて必死だったんですから」
少女はマコトの足にしがみ付いて小さくゴメンなさいと素直に謝罪する。
「・・・・えーと、その私も怒鳴ったりしてごめんね」
「さぁ、先にパパのところにお帰り」
マコトがそう言うと少女は半べそ掻きながらも頷くと戻っていった。
「さて、皆さん此処まで来たという事は退屈で平穏な日常を捨てる覚悟はあると思っていいんですね?」
マコトはぐるっと彼女達の顔を見渡す。
「ネギ先生は魔法界にとって特別なんです。彼がサウザントマスターの実子である以上、周りの大人達は彼を放っておかない。彼に関り続ければ確実に皆さんにも実害が生じる可能性が出てくる事ぐらいわかってますね?」
・・・・先程の一戦が彼女達を成長させたか、眼鏡ネコミミセーラー少女以外は皆良い目してる。
「はぁ~。退屈で平穏な日常という貴重な物を捨ててまでこっちのイカレタ日常に足を踏み入れるなんて俺には理解できんな」
マコトは溜息を一つ吐くとそう零した。
「んじゃ、このまま進んでくれ。ネギ先生と待ってるからよ」
そう告げ、マコトは魔法陣を発動させて姿を消した
マコトはネギが幽閉されている牢の前に姿を現すとその扉を開ける。
この魔法使い専用の牢もコンピューター制御でロックするというなんともファンタジックな世界が 色々と台無しだが、ちゃっちゃっとロックを解除して、下から上に扉を持ち上げる!!
その刹那、
「わぁあああああ!!! 開け!!」
その気合の入った掛け声と共に少年の拳がマコトの顎を寸分違わず捉える!!
ああっと! マコト君ふっとばされたーーーーー!!!
「オウフ」
「ああっ!? ごごごごごめんなさいマコトさん!! 大丈夫ですか!? どどどどどうしよう!?」
「ハハハせっかく助けに来たのに、偶然を装い俺の命を狙ってくるとは・・・・」
マコトは口許から垂れている血を拭き取るとそう言いつつ立ち上がった。
その足はジョーを打たれた所為か産まれたての小鹿の様に覚束なかった。
「そ、そんな・・・・僕、そんな事しませんよ~!!」
「飽くまで白を切る気か、偶然で寸分違わずジョーを打ってくる奴がこの世界に居るか!!」
「ぐ、偶然です!!」
「ほう、偶然だと? ロックを解除した時にガコンっていう大きな音がしたと思うんだがな? それにも気づかなかったと?」
「・・・・あ、あああの時は、そ、そそその、必死で」
腕を組んでいるマコトの横で必死で弁解する少年の後から大きな声で一言言葉が木霊する。
「ネギ!」
アスナを中心とするネギパーティ(女子達)が突っ込んでくる。
「ガハッ」
マコト君ふっとばされたーっ!
・・・・俺の扱い酷くねぇ? ネギ助けたの俺だよ? 皆をスムーズに此処まで導いたのも俺だよ? そんな俺を吹き飛ばしてさ、皆で盛り上がってさ、しかもさ、幼馴染の木乃香まで俺の事忘れてさ、向こうで盛り上がっちゃってさ・・・・もう、さっさと行こう。
「さて、お嬢様方。感動の再開はそこまでにして頂いて、時間がありませんのでさっさといきますよ? ネギ先生は今の状況をそこのオコジョから聞いてくれ」
ネギパーティ数人からの厳しい視線を無視しつつ、マコトは二枚の大きな魔法陣を展開する。
「はい、ネギ先生コレ」
マコトはネギに杖と指輪とパクティオーカードを渡す。
「あ、ありがとうございますマコトさん。あの、この魔法陣はなんですか?」
「ああ、これは・・・・」
マコトが説明しようとした時、片方の魔法陣から刹那と楓が現れる。
「単なる転移魔法ですよ、二人とも足止めご苦労」
「いえ、お役に立てたようで。あ、ネギ先生もご無事で」
「はいっ! マコトさんや皆さんのおかげです」
「せっちゃん、おかえり」
刹那と楓を労うネギパーティ。
「これが転移魔でござるか~やはり便利でござるな~」
だが、楓だけが空気を読まずに、自分の足元の魔法陣を突っ突いていた。
「よーし、世界樹最深部まで一気に飛ぶからそっちの魔法陣に乗れ」
ワラワラと魔法陣の上に移動する。
「なにやってる楓! 早く来い! 置いてくぞ」
「おおっ、すまんすまん」
そして、マコトが指を鳴らすと同時に魔法陣は発動し、淡い光と共に周りの景色が一変する。
「うぉっ、なんだコレ」
「なんで巨大遺跡が学園の地下にあるんだ!?」
「そんな事より、ネギ先生カシオペアはどうですか?」
そう言われ、ネギはカシオペアに目を向けると止まっていたカシオペアの針が規則正しく時を刻んでいた。
「はい、大丈夫です。」
「あとはネギ先生次第です、カシオペアを使うのも使わないのも」
「ちょっと、マコトさん! 此処まで来てなに言い出すのよ?」
静かなこの空間にアスナの声が響く。
「アスナさん達もネギ先生と戻る事を選んだ様にネギ先生にも選ぶ権利があると思いますが?」
それを聞いてアスナは俯き、言葉を失う。
「アスナさん、マコトさんありがとうございます。みんな掴まってください、いきます!!」
ネギはカシオペアを暫く見つめた後、力強い声でそう口にした。
そして、ガラッと景色が変わるとそこはお空の上だった・・・・。
「うわぁあああああ!! な、なんで空の上なの――――っ!!」
「知るか――――っ!!」
ネギの魔力ががっつり減ったな・・・・。
「落ち着け、転移魔法を奢ってやろう。」
マコトが指を鳴らすとまた景色がガラッと変わり、とあるテラスの上に降り立つ。目の前にはパレードが行われていた。
「おおおおおお」
「た、助かった―っ」
「マコトさんのそれ本当便利ね」
「ハハハ、それよりもどうやら成功したみたいだな。パレードがやってるぞ」
「ほ、本当だっー!!」
皆がタイムスリップの成功に盛り上がっている中、長谷川は急いでパソコンの電源を入れ、日時を確認する。
「間違いない、最終日だ、時刻は午前8時」
そして時間跳躍で自分の魔力を大幅に消費したネギが倒れた――――。
「とりあえず、ネギ先生は俺が運ぶからどこか休める場所ないか?」
俺たちは宮崎さんの提案で図書室にやってきた。
「ここなら学園際中誰も入ってこないと思いますー図書関係のイベントは総て図書館島ですし、どのサークルもここは使ってないですから。そ、それでネギ先生は・・・・」
「恐らく長距離の時間跳躍で魔力を使い果たしちまったんだ、大丈夫、半日も寝てれば回復するさ」
カモの声を聞きながらマコトはネギをソファーの上に降ろすと木乃香に視線を送る。
「木乃香頼む」
「・・・・うん」
木乃香は静かに頷くと、パクティオーカードを取り出す。
「アデアット(来たれ)!」
木乃香の声が図書室に響き、その身に漆黒のローブ付け、ゆっくりとネギに近づいていく。
「大丈夫やよ、ネギ君。これで一眠りしたら元気になれるからな~」
するとネギを中心に魔法陣が展開し、無数の光がネギの身体に次々と入っていく。
暖かい光に包まれ、ネギは安らかな寝息をたてる。
「魔力回復の魔法やよ、これで1時間もあれば全快できる筈や」
「すごーいっ、木乃香。いつの間にそんな凄い事できる様に・・・・木乃香?」
早乙女はいつもの調子で木乃香に触れようとした時、木乃香はその手から逃れる様にフワリと後方に飛び去る。
飛び去った先にはいつの間にかマコトと刹那が皆とは距離を取って並んで立っていた。
「アデアット(来たれ)!」
「・・・・アデアット(来たれ)」
そして刹那とマコトまたパクティオーカードを掲げ、使用する。
「え? ちょっと、三人でなにしてんの?」
アスナがそう訊くとマコトはゆっくりとローブの袖から仮面を取り出す。
「申し訳ないのですが、我々三人はここから別行動をとらせていただきます」
「え? 何言ってるのよ!! これから協力して超さん止めるんでしょ!?」
アスナはそう声を荒げる。その声を聞きながらマコトは手に持った君の悪い笑みを浮かべるピエロの仮面を付ける。
「協力はしました、アスナさん達を此処まで導いたでしょ? ネギ先生の魔力回復にも努めましたし、あとは皆さんが望む様に動けばよろしいかと考えますが?」
「マコトの兄貴、一つだけ教えてくれ。マコトの兄貴達は超側に付く気なのか?」
マコトとアスナの言葉で重苦しい空気が漂う中、ケットシーのカモがそう訊ねた。
「いや、それはない。俺達は俺達でやる事があるから此処に居るだけだ、寧ろ俺の計画上、超 鈴音とは敵対する事になる。同時にアスナさん達とも敵対するだろうな」
「つまり第三勢力か・・・・答えてくれてありがとよマコトの兄貴。互いの計画が上手くいくことを祈ってるぜ」
カモはそう口にし、机の上でサムズアップしてみせた。
「ああ」
「ちょっと待って! 木乃香、それに刹那さん。二人共わかってるの!? 私達戦う事になっちゃうかも知れないんだよ!!」
声を荒げるアスナに木乃香は一歩前に出て、アスナを見据える。
「アスナ、もう忘れたんか? さっき地下でマコっちゃんに訊かれたやろう?」
“退屈で平穏な日常を捨てる覚悟はあると思っていいんですね?”
「って、そしたら誰一人否定せんかったやろ? そして此処まで来た」
木乃香はそこで一度言葉切って、マコトと同じ仮面を付けた。
「此処はもう皆と笑って遊んで暮せる日常と違うんよアスナ? 此処は親友と力を持って対峙する非日常やよ? はよう自覚せんとウチ相手ならまだしも、マコっちゃんやせっちゃん相手だと怪我するえ」
「私達は既に覚悟を決めています。皆さんが私達の計画の障害となるなら容赦はしません・・・・」
そう言い、刹那も仮面を付けた。
「おいおい、楓と古部長以外酷いツラだな。」
一瞬でマコトに少女達の鋭い視線が集まる。
「ハハハ、そう睨むなよ。あ、そうだった一つ言い忘れてた。」
マコトは自分たちの下に転移魔法を展開させ、執事の様に仰々しく頭を下げる。
「ようこそ非日常へ」
そう言葉を残し、三人は光と共に姿を消した。
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